福島原発事故後の規制基準強化から、長引く「稼働」の審査
再稼働については、ウクライナ侵攻を契機にしたエネルギー価格急騰、供給懸念を受け、政府・与党で急げという議論が噴出。自民党の原発推進派の議連が2022年3月、テロ対策施設の設置ができていない原発についても、緊急稼働させるよう決議。政府は6月の「骨太の方針」に「効率的な審査」などを盛り込んだ。
こうした意見の背景にあるのが、福島第一原発事故を受けて規制基準が強化され、審査が長引いていることへの不満だ。
矢面に立ったのが安全審査を担う原子力規制委員会だ。9月7日、審査会合の開催を柔軟化し、頻度を上げるなど審査効率化の方針をまとめた。
ただ、審査会合は原則公開、事前の事業者からのヒアリングは後日議事録を公開するという現行の仕組みについて、電力会社などから「本音の議論が必要」などの声が出ていたが、規制庁は公開の原則は維持する方針だ。
具体的に、福島第一原発の事故時に54基あった原発は21基が廃炉になり、残る33基のうち27基が審査を申請し、17基が審査に合格したが、再稼働は10基にとどまる。実際の再稼働は、対策工事の進み具合や、地元の意向に左右される。
現在の最大の焦点が、東電柏崎刈羽原発(新潟県)だ。テロ対策など安全管理に関する問題が相次いで発覚し、東電の体質まで問われ、再稼働の見通しが立たないでいる。
審査終了から4年たつ日本原子力発電東海第二原発は、避難計画の不備を理由に、運転差し止めを命じる地裁判決が出た。避難計画が求められる30キロ圏内に100万人近くが住み、地元の同意に至っていない。