著名人VS英タブロイド紙、カミラ王妃の元夫も訴えていた
じつは、「プライバシーの侵害」、とくに「盗聴」をめぐる英メディアの反応は非常にナーバスなものがあります。今回のヘンリー王子らによる提訴に対して、AN社が素早く「preposterous smears」(ばかげた中傷)であり、「pre-planned and orchestrated attempt to drag the Mail titles into the phone hacking scandal」(わが社を盗聴スキャンダルに巻き込むために、あらかじめ計画され、組織化されたたくらみだ)と反応していることからもわかるように、社の存続を脅かす危険なテーマなのです。
実際、2011年には、英国で1・2位を争う大部数を誇っていた人気タブロイド紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」が、電話盗聴スキャンダルで廃刊に追い込まれています。ちなみに、この時の「盗聴被害者」リストには、ウイリアム皇太子も含まれていたとのこと。
報道によると、現時点でAN社以外の複数メディアが著名人から「プライバシー侵害」で訴えられており、なかには、2023年6月の戴冠が発表されたばかりのカミラ王妃の元夫アンドリュー・パーカー・ボウルス氏に訴えられているケースもあるそうです。
皮肉なことに、エリザベス女王の崩御に伴い、英国王室への注目はますます高まるばかり。ヘンリー王子と英メディアの「停戦」は遠い未来に持ち越されそうです。
それでは、「今週のニュースな英語」は「sue A over B」(AをBで訴える)を使った表現を紹介します。ビジネスの場面でよく使われる表現です。
I'll sue you over unpaid wages
(給料未払いで訴えるぞ)
Uffizi Galleries sue Gaultier over use of Botticelli images
(ウフィツィ美術館がボッティチェリの絵の無断使用で、ゴルティエを訴えた)
I sue company over termination
(不当解雇で会社を訴える)
英国では、新聞は宅配ではなく駅の売店で買う習慣です。キャッチーな王室メンバーの写真にひかれて手に取ると、まったく関係のない記事ばかり...ということもよくあります。英メディアのしたたかな「営業戦略」に、油断は禁物です。
(井津川倫子)