巨額の貿易赤字も円安の一因、介入しても効果は一過性
こうした事態をエコノミストはどう見ているのか。
日本経済新聞(10月13日付オンライン版)「7財務相『通貨変動の大きさ認識』 引き締め影響に留意」という記事に付くThink欄の「ひと口解説コーナー」では、東京財団政策研究所主席研究員の柯隆(か・りゅう)氏は、
「円は1ドル=147円に迫っている。半年以上前から想像され、エコノミストたちは繰り返して警鐘を鳴らしていた。『断固とした措置を取る』と言っていたはずだが、今まで一回限り介入した。その効果は一過性。重要なのは、金融政策の転換であるが、頑なにそれが拒否されている」
と、政府・日銀の姿勢を批判。そのうえで、
「優柔不断な金融当局の鈍さは投機筋にとって円を攻める絶好な機会である。コアなインフレ率云々という議論よりも家計の生活負担は年末に向け、急増しそう。ちなみに目に見える負担と見えない負担がある。ガソリン補助金のような財政出動は税金から支出されている。あれも各家計が今または将来負担することを忘れてならない」
と、物価高に対するバラマキ対策にも疑問を呈した。
同欄では、日本経済新聞社特任編集委員の滝田洋一記者が、
「金融政策は各中央銀行の使命に応じて(in line with their respective mandates)、とG7声明はうたっています。しかるにOECD加盟国の8月の物価上昇率を比べると、OECD平均10.3%、EU平均10.1%、ユーロ圏平均9.1%、米国8.3%、G7平均7.5%、日本3.0%という具合に日本はOECD加盟国で最も低い」
と、各国の物価上昇率を比較。そのうえで、
「米欧が利上げを急がざるを得ないのは、こうした高インフレという難題があるからです。日本の低金利が円安をもたらしているのは確かですが、金利差の背景にあるグローバルな物価格差にも目配りする必要があるでしょう」
と説明した。
ヤフーニュースのコメント欄では、時事通信社解説委員の窪園博俊記者が、円安の動きに歯止めがかかっていない状況に、
「前日(10月12日)の東京時間には、朝方に1ドル=145円90銭前後を突破し、さらにドル高・円安が進む展開となりました。この145円90銭は、先月に政府・日銀が介入した水準と目され、外為市場では介入を指揮した神田財務官にちなんで『神田シーリング(天井)』と呼ばれていました」
と説明。つづけて、「このシーリングを突破した」理由については、
「FRBの利上げと日銀の超緩和維持による日米金利差がなお拡大して投機筋の円売り・ドル買いが活発であること、さらに、日本の巨額の貿易赤字による実需の円売り・ドル買いが根強いためです」
とみている。そのうえで、
「こうした円が売られるファンダメンタルズに変化はない以上、為替介入を行っても円安に歯止めをかけるのは一過性に過ぎず、結局は円安が再び進行することになります。G20で為替介入を説明しても、円安自体は進まざるを得えないでしょう。改めて介入しても効果は一過性とみられます」
と、再び為替介入をしても「無駄撃ちに」と指摘した。