ニトリホールディングス(HD)の株価が2022年10月3日の東京株式市場で一時、前営業日終値比725円(5.9%)安の1万1465円まで下落し、年初来安値を更新した。
前週末の9月30日に発表した2022年8月中間連結決算で営業利益、経常利益が前年同期を下回った。足元で急伸する円安や資材価格の上昇が利益を押し下げている点が嫌気されており、「36期連続増収増益」が危ういとの見方も出ている。
アジアで生産した商品はドル建て決済...1円の円安、年間約20億円の減益要因
それでは中間決算の内容を確認しておこう。売上高は前年同期比2.1%増の4230億円、営業利益は10.9%減の690億円、経常利益は10.9%減の704億円、最終利益は4.5%減の514億円だった。
人件費の安いアジア各地で生産した自主企画の家具や雑貨などを輸入し、「お、ねだん以上。」のキャッチフレーズのもと、低価格販売するのがニトリのビジネスモデルだ。
企画から生産、物流まで自社管理するSPA(製造小売り)によって低価格を実現してきたが、アジアで生産した商品はドル建てで決済しており、円安と資材価格・物流費の上昇は逆風でしかない。
ニトリHDにとって対ドルで1円の円安は、年間約20億円の減益要因になる。
今上半期は1ドル=114円90銭で為替予約していたが、それでも前年同期(108円96銭)よりは円安だったため、71億円の減益要因になった。下期は為替予約せずスポットで対応するとしており、円安による減益がどの程度まで膨らむか、はっきり見えない状態だ。
中間決算発表に合わせて家具など一部商品で「1~2割の値上げを検討している」と表明したが、顧客の反応を含めて業績の影響は読み切れない。
証券会社リポート「家具などの耐久消費財への需要が減少する可能性にも留意」
ニトリHDは今期から決算期を2月20日から3月31日に変更するため、今期は13か月と11日の変則決算になる。
売上高や利益の予想の前期比は12か月決算の前期と比較した参考値を公表しており、中間決算を踏まえても、「増収増益」の予想になっている。増益は経常利益を対象に「36期連続増収増益」を見込んでいるわけだが、この達成さえ危ういとの見方も出始めた。
野村証券は中間決算発表後のリポートで「原価低減効果等は予想されるものの、円安等の外部環境に鑑みて、会社の2023年3月期の利益計画の達成は難しいと見ている」としたうえで、「今後消費環境が悪化した場合には、家具などの耐久消費財への需要が減少する可能性にも留意が必要」と指摘した。
立志伝中の似鳥昭雄会長が、数々の困難を克服し育て上げたニトリHDだが、インフレや円安を前に曲がり角に立っている可能性がある。(ジャーナリスト 済田経夫)