米アップルが9月に発売した最新型のスマートフォン「iPhone14」の販売価格は、日本が世界37の国・地域のなかで最も安いことがわかった。
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(東京都港区)が2022年10月5日に発表した調査「日本のiPhone販売価格は世界37の国・地域の中で最安」で明らかになったものだ。
急速な円安が背景にあるが、アップルが日本での高いシェアと人気を維持するため、戦略的に価格を設定した可能性もありそうだ。
「iPhone14」シリーズの日本販売価格、一番高いトルコの半分
MM総研の調査では、2022年9月16日に世界で発売開始となったiPhone14シリーズを中心に、各国のアップルオンラインストアの価格を比較分析した。
その結果、2022年9月時点でのiPhone14シリーズの日本販売価格は、iPhone14(11万9800円)、iPhone14Plus(14万9800円)、iPhone14Pro(19万4800円)、iPhone14ProMax(23万9800円)で、4モデルすべてが37の国・地域の中で最安となった=図表1参照。
iPhone14に限ると、2番目に安いのは中国(12万2429円)、3番目香港(12万5436円)、4番目台湾(12万6818円)となり、最も高いトルコ(23万8454円)は日本の約2倍となっている。
また、2022年6月時点でのiPhone13の価格も日本が最安となった=図表2参照。直後の7月にアップルによる価格改定によって、日本での販売価格が2割ほど高くなった。
なお、37の国・地域の中で価格改定があったのは、日本を含め、トルコとオーストラリアの計3カ国だけで、トルコも日本同様に約2割の大幅な値上げとなった。米国における価格改定がなかったことから、為替変動に基づく価格調整が行われたものと推察できる。
その後、9月にiPhone14シリーズの発売で、型落ちモデルとなったiPhone13は世界各国で値下げが行われた。日本は10万7800円(7月価格より1万円の値下げ)となり、7月の価格改定で4番目の安さとなったが、再び最安となった=再び図表2参照。
ほかに、iPhoneSE3も7月の価格改定で日本は3番目に安い価格となっていたが、9月には6万2800円で再び最安となった=図表3参照。2番目は米国(6万6725円)、3番目は香港(6万7255円)の順。日本以外の平均は8万397円で日本よりも約1万7600円も高く、最も高いトルコ(13万762円)は日本の約2.1倍となっている。
日本のiPhone人気は根強く、型落ちモデルも愛され続ける
ところで、MM総研では「iPhone指数」という興味深い指数を持ち出して、各国を比較している。その国のiPhone14価格を平均賃金で割ったものだ。平均賃金はOECD(経済協力開発機構)などのデータを参照した。指数の値が小さいほどiPhoneを購入しやすいといえる。
日本のiPhone指数は2.06%。37の国・地域の中で18番目に小さい値となった。つまり、iPhoneの購入しやすさでは、平均的順位といえる。詳しく見ていくと、最も小さいのはシンガポール(0.80%)で、2位米国(1.21%)、3位アラブ首長国連邦(1.25%)と続く。一方で、最も高いのはインド(13.63%)となった=図表4参照。2番目に高いのがフィリピン(10.89%)、3番目に高いのがブラジル(9.16%)だ。
iPhoneの購入しやすさでは、日本は世界の中で平均的順位なのに、ほとんどのiPhoneが最安となっているのはなぜだろうか。
今回の調査について、MM総研ではこう分析している。
「2022年9月時点における日本のiPhone14シリーズ価格は最安となった。しかし、7月にiPhone13シリーズ等の価格改定が行われたように、iPhone14シリーズの価格が1年間維持されるかは不透明だ。為替相場の変動によっては、再度の価格改定が行われる可能性は高いといえるだろう。さらに高くなった場合には約50%のiPhoneシェアは減少することも予測される。
しかしながら、日本におけるiPhone人気は根強く、(1)アップルオンラインでも継続販売されるiPhone13やiPhone12の型落ちモデルが長く支持される可能性、(2)携帯キャリアやアップルによる下取りサービスのさらなる利用拡大、(3)中古事業者やフリマサイトでの売却及び中古購入の増加――により高級品となりつつあるiPhoneを継続利用したいと考えるユーザーは多いことが想定され、シェアの維持・拡大を図ることも十分に可能だろう。今後の価格変動とAndroidスマートフォンとのシェア競争にも注目したい」
アップルが日本での高い人気とシェアを維持するために、戦略的に価格を設定したとみられるというわけだ。
調査では、日本、中国、台湾、韓国、インド、タイ、シンガポール、米国、カナダ、スイス、イギリス、フランスなど37国・地域のアップルオンラインでの直販価格(消費税などの税金を含む)を比較した。価格は、2022年6月1日・同7月6日・同9月12日時点での為替のレート基づき、円換算して比較した。
海外駐在経験者「一時帰国時にiPhone購入を頼まれます」
今回の調査結果について、ヤフーニュースのコメント欄ではこんな意見が寄せられている。
「日本で購入するアップル製品の安さは昔から知られていることで、円安情勢の今でもそれは変わりません。海外駐在していると、一時帰国時にはiPhoneを買ってきてくれと頼まれます。日本での発売日も早いですし、値段も安い。アップルストアで買ってアップルストアのレシートを付けて物を渡すと、速攻でSNSにアップして友達に自慢します。今こそインバウンド再開で外貨を稼ぐときです。日本は後退したとか貧乏になったとネガティブになっている場合ではないのです。商売になっている間は商売しようよ」
「アンチの方もいらっしゃいますが。iPhoneの最大の利点は、OSが機種が変わってもiOSであり、ある世代まではサポートされ続け、操作感もほぼ変わらないこと。そしてデータのほとんどはクラウドに保管されているので、ハードが変わろうが、トラブルに陥ろうが、再現性や保全性が高いことかなあ。この概念が、iPhoneが出る前の日本の携帯やスマートフォンにはなかった。そしてMACとの親和性も高くて、MacBookの売上にも貢献しているし、日本の販売価格を戦略的に安くするのもうなずける」
「世界最安値であるiPhoneに手が届かないということは、(日本が)世界的に見て低収入に属することを意味するのだろうか?米価格の14Proでも999ドルからなので、決して高すぎるというわけでもない。かつての我々が『海外買い物ツアー』をやっていた逆バージョンが今なのだな。海外からやってくるインバウンドの外国人からしたら、ありとあらゆるものが安いのだろうね」
「大卒新入社員の手取り月給よりも高くなりそう。iPhoneは再び富裕層のステータス品になるのだろうな。普通に使う分には数万円で売っているアンドロイドで十分だし」
「この円安の前までだって日本人の所得水準でこんなにiPhoneユーザーが多いのはおかしかったのだよ。iPhoneに限らず、日本人は自分の所得に対して高級品を買い過ぎだし求めすぎ」
(福田和郎)