EVの「産業クラスター化」できるかどうかがカギ
「週刊エコノミスト」(2022年10月18日号)の特集は、「EV&電池 世界戦」。世界のクルマの電動化は日本の想像をはるかに超えて進んでいる。そのため、「エネルギーインフラの再構築」の発想を持たなければ日本のEVに未来はない、と警鐘を鳴らしている。
「米中欧のEV覇権争いと戦略なき日本の危機」と題したレポートを寄せているのは、野辺継男・名古屋大学客員准教授。2030年までに世界の蓄電池の8割はEVが使うというブルームバーグNEFの予測を紹介し、EVは再生エネルギーの国家戦略になっていると指摘している。
「石油が20世紀経済の生命線であったように、再エネ時代の主要な生命線はエネルギーをためる蓄電池だ。電池の域内生産の比率を高めなければ、今後、原油や天然ガスの輸入を削減しても、蓄電池の国外依存が増え、経済やエネルギー安全保障上の観点からも問題になる」と警告する。
米欧中にあって日本にないものは「EVの産業クラスター」だという。同誌によると、電池の素材精製から正極・負極の開発、セルの製造、EVへのバッテリーシステムの組み込み、それら製造の自動化、さらにはリサイクルといった観点で、国の支援も得て、地域ごとに産業クラスターを形成しつつある、と説明する。
EVの電池は、満充電の容量が80%を切ると車載用には使えなくなるが、再エネ電源をためる定置用蓄電池に再利用することができるのがポイントだという。
蓄電池産業を国内で事業面、技術面で発展、育成させるためには十分な内需が必要で、その需要家はEVの生産者だ。電池立国を目指す覚悟が必要だ、としている。
韓国の新規タクシー登録の36%はEVだという、清水岳志氏(NNAソウル記者)のレポートも興味深い。韓国の現代自動車グループのEV化への取り組みが積極的だという。充電網に政府が本腰を入れ、国内の充電器設置数は21年末までに10万5000基に急増した。
韓国で官民挙げてEV普及が進められているのは、EV産業育成が「国策」として位置づけられているからだ。
内燃機関を優先し、水素・合成燃料へ執着するトヨタ自動車のEV戦略をレポートした記事と対比すると、違いが鮮明だ。
「内燃機関での成功体験」がEVでのつまずきになるかもしれないという指摘は、決して荒唐無稽ではないと思った。
(渡辺淳悦)