鉄道150周年も、課題山積み...週刊東洋経済「岐路に立つ鉄道」、週刊エコノミスト「EV&電池」を特集

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする(※「週刊ダイヤモンド」は、先週が今週との合併号だったため、今週は休刊)。

鉄道150周年...鉄道は岐路に立つ

   2022年10月11日発売の「週刊東洋経済」(2022年10月15日号)の特集は、「開業150周年 岐路に立つ鉄道」。10月14日の鉄道記念日を前に、テレビでは鉄道関連の特集が連日放送されているが、この特集では、コロナ禍での値上げ検討や赤字ローカル線の存続問題など、負の側面にも焦点を当てている。

   1872年、新橋-横浜間の開業で始まった日本の鉄道。1987年4月に分割民営化され、JR7社が発足。88年には青函トンネルと瀬戸大橋が開通、92年は東海道新幹線に最高時速270キロの「のぞみ」が登場するなど、鉄道は一時期の低迷を脱した。また、北陸や九州、北海道新幹線の開業により、新幹線のネットワークは大きく拡大した。

   だが今、コロナ禍によって、鉄道はこれまで経験したことがない急激な利用減にさらされている。黒字路線の収益でカバーしてきたローカル線の維持は、困難になってきた。日本の近代化と経済を支えてきた大動脈に、何が起きているのかを検証している。

◆「離れ小島」で開業した西九州新幹線

   9月23日に開業したJR九州の西九州新幹線への「期待と懸念」から書き出している。長崎駅を出た「かもめ」の車体側面に光る行き先は「博多」になっているが、この列車の本当の終点は、所要時間30分足らずの武雄温泉駅だ。博多方面へは同じホームの向かい側に停まる在来線特急「リレーかもめ」に乗り継ぐ対面乗り換え方式となる。

   西九州新幹線は長崎-武雄温泉間約66キロで新幹線としては全国一短く、ほかの新幹線ともいっさいつながっていない「離れ小島」の路線だからだ。

   博多-長崎間の所要時間短縮効果は、在来線時代に比べて30分程度。武雄温泉と九州新幹線の新鳥栖間については、整備方式そのものが決まっていない。国やJRはフル規格での建設を求めているが、佐賀県は所要時間短縮効果が薄く、フル規格新幹線の建設費を負担するメリットがないなどとして、これに反対しているからだ。

   なぜ、「離れ小島」の新幹線が開業したのか。政治に翻弄された歴史がある。福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線西九州(長崎)ルートは、北陸や北海道新幹線などほかの4路線とともに、73年に整備計画が決定された。

   その経緯に大きく関連しているのが、69年に進水した原子力船「むつ」だ。青森県むつ市の大湊港を母港としていたが、洋上での放射能漏れ事故で地元が帰港を拒否。そこで佐世保への受け入れを表明したのが長崎県だった。

   その見返りに、新幹線の着工が「ほかの4路線に遅れないこと」とする念書を自民党と交わしたという。当初は佐世保市の早岐を経由するルートだったが、収支を理由に佐世保市を経由せずに大村、諫早を経て、長崎へ至る案に変更。武雄温泉から長崎方面へは新幹線規格のインフラを建設したうえで、博多-長崎間に高速の在来線特急を走らせる「スーパー特急」方式、その後、新幹線区間と在来線を直通する「フリーゲージトレイン」方式が検討されたが、結局、リレー方式で開業することになったのだ。

   フル規格での建設を認めない佐賀県の姿勢は固いようだ。乗り換えが必要なリレー方式がいつまで続くのかはわからない。

◆仙台以北の鉄道貨物が消滅する可能性?

   新幹線絡みで、もう一つ懸念されているのが、北海道新幹線延伸で紛糾する貨物の幹線の存続だ。北海道新幹線では、2031年春の新函館北斗-札幌開業に向けた準備が進んでいる。その中で議論が空転しているのが並行在来線、函館-長万部の存廃だ。

   札幌延伸に伴い、函館線の函館-長万部-小樽の約288キロがJR北海道の経営から分離される。このうち、長万部-小樽の140キロはほとんど乗客が見込めないことから廃線が決まった。

   一方、函館-長万部間(147.6)キロは札幌や道東、道北に向かう貨物列車が1日51本も走る物流の幹線である。しかし、議論がかみあわないまま時間が過ぎ、このままでは存続が難しくなると、国と道、JR北海道、JR貨物の4者で本格的な協議に入ることになった。

   同区間の運営のスキームのほか、国の外郭団体からJR貨物を通して並行在来線の運営会社に支払われる「貨物調整金」の財源問題が焦点になると見られるという。

   東北発着の貨物量は少なく、北海道までつながってネットワークは成り立っていることから、この問題が解決しなければ、仙台以北の鉄道貨物が消滅する可能性もあると指摘している。

   新幹線関連の問題のほかに、今大きな問題になっているのが、赤字ローカル線だ。

   国の検討会は「ローカル線を取り巻く危機的状況が解消されるものではなく、これ以上の問題先送りは許されない」と、7月に提言を公表した。

   平常時の平均通過人員が「1000人未満」の線区において、鉄道事業者や沿線自治体が要請すれば、国が主導して新たな協議会を設置するというものだ。これまで自治体が協議入りを拒んでいたのを許さない厳しい姿勢が見て取れる。

   同誌の特集では、該当する99線区を地図に掲載している。いわゆるローカル線だけでなく、奥羽本線の新庄-湯沢間、羽越本線の酒田-羽後本荘間、日豊本線の佐伯-延岡間など幹線にも「1000人未満」の区間はあることがわかる。

   経営が厳しいのは、地方だけではない。大都市圏でもコロナ後も旅客数は元に戻らないとして、鉄道各社は来春、値上げを検討している。

   「鉄道150周年」は、伸びる一方だった鉄道が「収縮」へと舵を切る年になるかもしれない。

姉妹サイト