米国経済に「Good News」はウォール街に「Bad News」
今回の雇用統計がウォール街に与えた衝撃を、その名も「Good News Is Bad Newsの典型 11月FOMCは0.75%の利上げになろう」(10月11日付)というタイトルのリポートにまとめたのは、第一生命経済研究所主任エコノミストの藤代宏一氏だ。
藤代氏が雇用統計の中で「Good News」だとしたのは「失業率が(市場の)予想以上に低下した」こと。一方で、米国経済にとっては、雇用が引き続き堅調であることを示して明るいニュースであるはずだが、ウォール街にとっては「堅調なデータは労働市場が利上げに耐えられるとの自信を」FRBに与えた点で「Bad News」なのだとする。なぜなら、11月FOMC(連邦公開市場委員会)では4会合連続で0.75%の利上げが予想されるからだ。
藤代氏はこう指摘する。
「9月雇用統計で台風の目となったのは普段あまり注目されない失業率であった。3.7%で横ばいが見込まれていた失業率は3.5%へと低下し、労働市場の底堅さを映じて『しまった』。3%台半ばの失業率は4%台半ばへの上昇を覚悟しているFed(米連邦準備制度)にとって低すぎる水準だろう」
もう1つ、「Bad News」があった。
「今回の雇用統計で残念だったのは平均時給の高止まりと労働参加率の低下であった。平均時給は前月比プラス0.3%、前年比プラス5.0%と市場予想通りに減速したものの、依然としてパンデミック発生前を著しく上回っており、また瞬間風速を示す3か月前比年率の伸びはプラス4.8%と減速の気配に乏しかった。背景にあるのは労働参加率の低下、すなわち労働市場から人々が大量離脱したことによる労働者不足である」
年代別にみると55歳以上がやや上昇した一方、働き盛りの25~54歳が低下した(図表1参照)。また、55歳以上の回復ペースも驚くほど鈍い。企業側としては高い賃金を提示しながら人手不足の穴を埋めなくてはならない。つまり賃金インフレの鎮静化にまだ相応の時間を要することを物語っている。
このこともFRBがインフレ抑制のために、今後も強硬な利上げを続ける予想につながっているわけだ。