日本経済の処方箋...減税と一律給付がベスト
コロナは財政の「緊縮VS反緊縮」という神学論争に終止符を打った、という項に注目した。
長く論争が続いてきたが、1つのデータが結論を出したという。本書では、2000年から2021年までの政府債務残高、国債の利回り(10年物)、消費者物価指数の推移をグラフで示している。
2021年12月末時点での政府債務残高は1218兆円まで膨らんでいるが、国債の利回りは0.1%、消費者物価指数は前年同月比マイナス0.7%である。
国債の利回りと価格は逆の関係にあるので、この3つのデータを見る限りでは、「政府債務残高が膨らんでも、国債が暴落することもハイパーインフレになることもないという事実だけは確認できる」としている。
日本経済の処方箋について、「政府が無能なら減税と一律給付がベスト」と提言している。
単純に消費税を引き下げれば、その分だけ購買力は高まるし、現金を給付すれば消費はさらに増える。
コロナ禍という緊急事態だからこそ国民の理解も得られたのに、政府内では検討している様子もない、と憤っている。需要が高まれば民間の投資も増える、という簡単な話だ、と。
「コロナ禍におけるスタグフレーションという外圧で目を覚ませるかどうかが日本の存亡につながっている」
こう結んでいる。日本だけがおかしいことに多くの人が気づくべき時期がきたということだろう。
(渡辺淳悦)
「スタグフレーションの時代」
森永康平著
宝島社新書
990円(税込)