給料は上がらず、物価だけが上がる...悪夢の「スタグフレーション」

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   モノの値上げラッシュが続いている。モノと賃金が比例しながら上がるインフレではなく、モノだけが値上がりするスタグフレーションが、日本で現実に起ころうとしている。

   本書「スタグフレーションの時代」(宝島社新書)は、コロナ禍によって世界的なインフレが進むなか、日本だけがそうなる理由とは何か。また、どういったメカニズムで生じたのかを、若手経済評論家がわかりやすく解説した本だ。

「スタグフレーションの時代」(森永康平著)宝島社新書

   著者の森永康平さんは、1985年生まれ。金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。証券会社や運用会社でアナリスト、ストラテジストとして従事。著書に「MMTが日本を救う」や父・森永卓郎さんとの共著「親子ゼニ問答」などがある。

   スタグフレーションは造語であり、景気停滞を意味する「スタグネーション」と「インフレーション」を組み合わせた言葉だ。

   一般的には、景気が後退すれば需要が減少し、モノの値段は下がっていくはずだ。だが、原油価格や金属価格が上昇することで原材料費が全般的に高騰し、不況下にもかかわらず、物価は上昇していくという現象――スタグフレーションが起こる。

中国に「買い負け」している日本

   足元の日本における物価上昇の要因は外部の影響が大きいが、日本が自ら招いた部分もかなりあると、森永さんは指摘している。

   それは投資不足だ。

   政府が財政赤字を気にして必要な投資をしなかったことで、日本はデフレ経済を脱却できず、結果として民間企業も投資を控え、コストを抑えて売価を下げることでしか消費者をひきつけることができなくなった。気がつけば日本は、海外に多くのモノを依存することになってしまった。

   牛丼を例に、中国に対して「買い負け」していることを説明している。

   新型コロナウイルスの影響により、食肉に対する肉食需要が高まり、米国国内でも牛肉価格が上昇。輸入価格も上昇した。中国はブラジル、アルゼンチンなど主に南米から輸入していたが、経済発展と富裕層の増加により焼肉ブームが起こり、日本の仕入れルートにも手を出してきた。日本の輸入量はたいして変わらない中で、中国の米国からの輸入量は急増している。

   日本が「失われた30年」を過ごす一方、中国は巨額の投資を背景に急成長を遂げた。その結果、食料の「買い負け」という予想もしていなかったインフレ要因が新たに発生した、と説明している。

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