上司への信頼で言葉の受け止めが変わる ~人には感情があることを忘れない
こうした受け止め方の差は、説明の明瞭さではなく、あなたがそもそも、その媒体を信頼しているかどうかで現れるものといえます。同様に、部下は信頼する上司の言うことであれば、真っ直ぐに受け止めてくれるでしょう。
「君のためを思って注意しているんだ」と言った場合でも、部下から信頼があるかどうかで、相手の反応は180度変わってきます。
部下が「ありがたい」「嬉しい」と思うか、「感情任せなだけだ」「どうせ上司の自己保身のためだ」と思うか。それは、ひとえにあなたと部下との日頃からの信頼関係にかかっています。部下からの信用がないのに、コミュニケーションスキルをいくら磨いても、意味はないのです。
信頼関係を築くには、まずあなた自身が一所懸命に組織の仕事に取り組むこと。そして、上司として、何かあれば絶対に部下を支える姿勢を持つことです。
組織を束ねる上司は、上層部から組織全体の結果を問われる立場にあります。厳しい業績目標が課されると、部下に対しても「仕事を滞りなく進めているか」「きちんと売り上げをあげているか」など、本人の職務や業績に意識が向きがちです。
マネジメントには、ヒト、モノ、カネの管理が必要と言われます。
そしてともすると、この3つが同列に論じられる風潮があります。しかし、忘れてはならないのは、人には感情があるということです。近年、「人的資本経営」が脚光を浴びていますが、あらためて人の生産性を高めるマネジメントの重要性がクローズアップされているのです。
では、具体的に部下とどのように信頼関係を築いたらよいのか――。引き続き、<「本人のために」と注意しても、素直に聞こうとしない部下...どう育てる?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE 13(後編)】(前川孝雄)>で解説していきます。
※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。
【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授
人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。