「OPECプラス」原油減産で世界経済に新たな危機! バイデン大統領「国内で原油減産、海外に増産要請」チグハグ対応...中間選挙ピンチに

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   また世界経済の危機に新たな暗雲が加わった。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が2022年10月5日、11月から原油生産量を日量200万バレル減らすと決めたのだ。

   減産幅は、新型コロナが猛威を振るった2020年以降で最大規模だ。数十年ぶりの高インフレに見舞われている国々で、このところ下落傾向にあった原油価格の高騰を再び招く恐れがある。

   また、西側諸国から制裁を受けているロシアにとって、追い風となる可能性がある。いったい、世界経済はどうなるのか。エコノミストの分析を読み解くと――。

  • 国内で原油減産、海外に増産要請、チグハグな対応のバイデン米大統領(ホワイトハウス公式サイトより)
    国内で原油減産、海外に増産要請、チグハグな対応のバイデン米大統領(ホワイトハウス公式サイトより)
  • 国内で原油減産、海外に増産要請、チグハグな対応のバイデン米大統領(ホワイトハウス公式サイトより)

原油産油国にとっても、自分の首を絞める減産決定

   報道によれば、「OPECプラス」の減産決定に激怒したのは米国のバイデン大統領だった。国内のガソリン価格高騰に苦慮していたバイデン米大統領は今年7月、中東歴訪の一環でサウジアラビアを訪問。反体制ジャーナリスト殺害を指示したとして批判し続けてきたサウジのムハンマド皇太子(現首相)に会い、原油増産を要請した経緯がある。

   バイデン米大統領は10月6日、記者団の前で「われわれはどのような代替策があるか模索しているが、まだ決定していない」と表明した。記者団から「サウジアラビア訪問を後悔しているか」と聞かれると、「訪問の目的は石油ではなく中東やイスラエルに関するものだった」としつつも、「OPECプラスの決定に失望している」と述べ、悔しさをにじませた。

世界経済に新たな危機が(写真はイメージ)
世界経済に新たな危機が(写真はイメージ)

   この事態をエコノミストたちはどうみているのか。

   ヤフーニュースのヤフコメ欄では、日本総合研究所上席主任研究員の石川智久氏が厳しい見方を示した。

「世界的に景気減速が明確化する中、OPECとしては、価格を維持するために景気に合わせて減産をしていくとみられます。つまり原油価格は今後も簡単に下がらないとみてよいでしょう。最近は湾岸諸国の経済が好調ですが、その傾向は当面続くと見られます」

   同欄では、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏も、

「結局、原油価格が下がらないと欧米のインフレ率が落ち着く時期も遅れますので、そうなると欧米中銀がより金融引き締めを強化せざるを得なくなり、欧米経済が景気後退局面入りする可能性が高まるでしょう。
そうなれば、原油価格にはさらなる下落圧力がかかりますので、結果的に産油国の減産は長い目で見れば、自国の首をさらに絞めかねないと言えるでしょう」

と、原油消費国、産油国双方にとってマイナスの影響を受けると指摘した。

冬場に向け、ヨーロッパのエネルギー危機さらに深刻に

再び原油が高騰するのか
再び原油が高騰するのか

   同欄では、日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員の小山堅氏は、大幅減産に対して、

「米国を始め、主要消費国にとっては、大幅減産で原油価格が上昇に転じることが懸念され、その懸念は産油国側にメッセージとしては伝わっていたものと思われるが、産油国のインタレスト(関心事)は、原油価格下支えと石油収入確保であった」

と、分析。そのうえで、世界経済に与える影響をこう説明した。

「7月以降ほぼ3か月続いてきた原油価格の低下傾向にこれで歯止めがかかろう。どの程度反転していくかどうかは、世界経済減速による石油需要鈍化・低下とのバランスによる。
しかし、当初市場関係者が予想していた100万B/D程度から一気に減産幅を積み増したことは、産油国の真剣さ・本気度を示しているともいえる。冬場に向けて、ロシア産のガス供給問題で欧州のガス需給や電力需給に懸念が集まっていたが、これで石油市場の行方も注目していく必要が高まった。円安傾向と相まって、原油価格がドルベースで上昇すれば、エネルギーコスト上昇が加速することになる」

米国内では原油減産、海外に増産要求ってどうなの?

米国ではガソリン高騰が国民の関心事だ
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   一方、バイデン政権は気候変動対策として「脱炭素化」「再生エネルギー推進」を旗印に、国内の石油・ガス開発の規制を進めてきた。そのため、国内の石油大手は減産を強いられているのが現状だ。そこにウクライナ危機が襲来、OPECプラスに原油増産を要請するというチグハグなエネルギー対応が露呈しているわけだが――。

   その矛盾を突いたのが、日本経済新聞「OPECプラス、200万バレル減産で合意 米欧の反発必至」(10月5日付)という記事につくThink欄の「ひと口解説」コーナーの日本経済新聞社編集委員・志田富雄記者だ。

「『もうひとつの減産』もあります。米エネルギー情報局(EIA)が昨日公表した直近の米原油生産量は日量1200万バレル(週次ベース)。前年同期に比べると70万バレル増えているものの、8月初めの1220万バレルから頭打ちになり、若干減る傾向が見えます」

と指摘。そのうえで、

「もともと脱炭素や収益を重視する株主の圧力などで増産は緩慢でしたが、今夏の相場下落で『緩やかな増産』もストップした格好です。相場下落の背後には世界的な景気減速と石油需給の緩和があります。コロナ禍が深刻になる直前、20年春の1300万バレルへの回復は遠のきました」

と、国内で原油減産、海外に原油増産要請という米国の複雑怪奇な経済事情を説明している。

   11月の中間選挙に向けて、米国では共和党がバイデン政権の「脱炭素化」政策批判で攻勢に出る一方、民主党を支えてきた環境保護団体などがいっそうの「脱化石燃料」を要求している。板挟みのバイデン大統領に「OPECプラス」の原油減産はもろ刃の剣になりつつある。

(福田和郎)

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