米国内では原油減産、海外に増産要求ってどうなの?
一方、バイデン政権は気候変動対策として「脱炭素化」「再生エネルギー推進」を旗印に、国内の石油・ガス開発の規制を進めてきた。そのため、国内の石油大手は減産を強いられているのが現状だ。そこにウクライナ危機が襲来、OPECプラスに原油増産を要請するというチグハグなエネルギー対応が露呈しているわけだが――。
その矛盾を突いたのが、日本経済新聞「OPECプラス、200万バレル減産で合意 米欧の反発必至」(10月5日付)という記事につくThink欄の「ひと口解説」コーナーの日本経済新聞社編集委員・志田富雄記者だ。
「『もうひとつの減産』もあります。米エネルギー情報局(EIA)が昨日公表した直近の米原油生産量は日量1200万バレル(週次ベース)。前年同期に比べると70万バレル増えているものの、8月初めの1220万バレルから頭打ちになり、若干減る傾向が見えます」
と指摘。そのうえで、
「もともと脱炭素や収益を重視する株主の圧力などで増産は緩慢でしたが、今夏の相場下落で『緩やかな増産』もストップした格好です。相場下落の背後には世界的な景気減速と石油需給の緩和があります。コロナ禍が深刻になる直前、20年春の1300万バレルへの回復は遠のきました」
と、国内で原油減産、海外に原油増産要請という米国の複雑怪奇な経済事情を説明している。
11月の中間選挙に向けて、米国では共和党がバイデン政権の「脱炭素化」政策批判で攻勢に出る一方、民主党を支えてきた環境保護団体などがいっそうの「脱化石燃料」を要求している。板挟みのバイデン大統領に「OPECプラス」の原油減産はもろ刃の剣になりつつある。
(福田和郎)