マッチングアプリが「恋活」や「婚活」の手段として当たり前になってきたようだ。
モバイル市場の調査会社「MMD研究所」(東京都港区)が2022年10月5日に発表した「2022年マッチングサービス・アプリの利用実態調査」によると、マッチングアプリはパートナー/恋人と出会った場所として「職場や学校」「友人や家族からの紹介」に次ぐ3番目。「合コン」や「結婚相談所」を超えた。
いったい、どのマッチングアプリが人気なのか。また、トラブルの心配はないのだろうか。
アプリなどネットでの結婚は7人に1人...政府調査
マッチングアプリで知り合ったカップルの結婚が急増している。2022年9月9日に国立社会保障・人口問題研究所が発表した最新の「出生動向調査」(2021年度)によると、初婚同士の夫婦が知り合ったきっかけを聞くと、マッチングアプリやインタネット交流サービス(SNS)など「ネット」と答えた夫婦が13.6%だった。約7人に1人の割合だ。
これは、前回調査(2015年度)の6.0%より2倍以上に増えた。約20年前の2002年調査では、「職場や仕事で」「友人・兄弟姉妹を通じて」の合計が6割以上あったが、今回は半数を割った。同研究所では「職場や友人を介した『リアル』な出会いは減少傾向を続けており、アプリやSNSなどを経由した出会いが今後の主流になる可能性がある」と指摘している。
さて、スマートフォンを所有する20歳~49歳の男女1万人を対象にしたMMD研究所の調査では、まず恋人探しの際の出会いの場所や手段を聞くと(複数回答可)、「職場や学校での出会い」(52.7%)が最も多く、次いで「友人や家族からの紹介」(38.5%)、「合コン」(18.8%)となり、マッチングサービス・アプリ(12.8%)は4番目だった。
ところが、現在結婚している人、または恋人がいる人に、パートナーと出会った場所や手段を聞くと(複数回答可)、「マッチングアプリ」(7.4%)は、「合コン」(5.2%)を抜いて3位に浮上した=図表1参照。確実に恋を成就する手段の1つとして定着していることがうかがえる。
マッチングアプリの「お付き合い成功率」は53.6%
マッチングアプリのサービス内容を知っているか聞くと、「知っている」と回答した人は32.5%となった。「知っている」と回答した人のうち、実際にマッチングアプリを利用したことがあるか聞くと、「現在利用している」(7.1%)と「過去に利用していた」(39.8%)を合わせて、46.9%の利用経験があることがわかった=図表2参照。
これは、全体でみると15.2%が利用した経験があることになる。男女別で見ると、サービス内容を知っていると答えた人の中の利用経験の割合は、男性が45.6%、女性が48.3%と女性のほうがやや高い=再び図表2参照。
では、どのマッチングアプリを利用しているのだろうか。経験者に利用したマッチングアプリを聞くと(複数回答可)、「Pairs(ペアーズ)」(50.8%)がダントツに多く、次いで「with」(22.5%)、「タップル」(21.1%)、「Omiai」(19.0%)、「Tinder」(18.5%)の順となった=図表3参照。
ところで、マッチングアプリからお付き合いに発展する「確率」は、どのくらいのものか。マッチングアプリ利用者に、出会って付き合ったことがあるか聞くと、「ある」と答えた人は53.6%だった。男性(53.7%)、女性(53.6%)でほとんど男女差はなかった。思いのほか効果があるようだ。
そのためか、マッチングアプリ利用者の74.8%がほかの人にも「おすすめしたい」と答えている。約4人に3人の割合だ。おすすめしたい理由を利用上位5位のサービス別で見てみると、「Pairs」は「登録者の多さ」、「with」は「条件などの検索機能」、「タップル」と「Tinder」は「出会いの多さ」、「Omiai」は「恋人ができる」がそれぞれトップとなった=図表4参照。
顔写真加工、ドタキャン、性目的、詐欺などのトラブルも
ただ、マッチングアプリは見知らぬ相手と出会う危うさがあり、トラブルが絶えない。その傾向は男女で異なるといわれる。男性が遭遇しやすいトラブルは、女性のプロフィール写真の過度な加工、デートのドタキャン、宗教や詐欺まがいビジネスの勧誘など。女性が遭遇しやすいトラブルは、性目的男性や既婚者による被害、相手からの暴言などが挙げられる。
実際、どのくらいの割合でトラブルに遭っているのか。利用経験者に聞くと、44.6%にトラブル経験があった。男性が45.8%、女性が43.6%と、男性のほうがやや多かった。
それぞれ体験したトラブルを聞くと(複数回答可)、「すっぽかし/ドタキャン」(26.5%)が最も多く、次いで「顔写真が加工されており実物とは違った」(26.0%)、「恋活/婚活ではなく性行為を目的としていた」(19.3%)と続く=図表5参照。男女別でみると、女性のトップは「恋活/婚活ではなく性行為を目的としていた」(30.0%)、男性のトップは「すっぽかし/ドタキャン」(33.0%)だった。
経験したトラブルをフリー回答でみると、男性からはこんなケースが――。
「会ってお話がしたいと言われ会ってみたら、副業をやっており稼げるのでぜひ紹介したいという話の流れになり、無理矢理よく分からない人がやっているセミナーに参加することになった」(20代)
「投資の勧誘」(40代)
詐欺まがいのケースが目立つ。また、ほかにこんな例が。
「写真がメイクなどで加工されており、印象が大きく違った」(30代)
「あらかじめ登録されていた情報と全く違っていた」(30代・男性)
「会う約束をして当日に待ちあわせ場所で待っていたが、すっぽかされた。その後連絡したが、返事がなく連絡を取れなくなった」(40代)
一方、女性のトラブルは男性よりも深刻なケースが多いようだ――。
「既婚者が独身と偽っていた」(20代)
「別人の写真を登録していた」(40代)
こちらは、結婚詐欺まがいのケースが目立つ。また、心を傷つけられる体験も挙げられている。
「食事に行った際に、会計でこちらが半分出すと言ったが、相手が『全部出すのでいいです』と言った。その方とはこれ以上お会いする気がなかったので、その後のメールでもそのような言葉で伝えたのだが、『つきあう気がないのであれば食事代を返せ』と口座を指定して入金を迫ってきた」(30代)
「見た目について嫌なことを言われた」(30代)
「会うのを断った瞬間から、罵詈雑言のメッセージがずっと来ていました」(40代)
なお、調査は2022年9月2日~9月5日、スマートフォンを所有する20歳~49歳の男女1万人を対象に行い、そのうちマッチングサービス・アプリ利用経験者に集中的に聞いた。
(福田和郎)