業界内競争で値上げできない情報、運送、不動産
一方で、価格転嫁率が低い業種もある。「ソフトウア受託開発」などを含む「情報サービス」(14.4%)や、原油価格高騰の影響を受けているトラック運送などを含む「運輸・倉庫」(17.7%)などだ=再び図表3参照。
企業からはこんな声が挙がっている。
「運賃交渉を継続中。業界内には積極的な値上げ交渉をすることによる荷主離れを懸念して値上げが進んでいない」(一般貨物自動車運送)
「見積書には転嫁した単価で提出したが、競争が激しく結局販売価格は今までとほぼ変わらない」(パッケージソフトウェア)
「業界や国が価格転嫁の要請を文書などで取り組み出してきており、理解してもらえる顧客は若干出てきたが、さらなる要請をお願いしたい」(港湾運送)
「工事量全体が増えておらず、受注競争が激しく、材料費や外注費(加工費、労賃)などの上昇分を転嫁できていない。現状は粗利益を極限まで削って耐えている」(不動産代理業・仲介)
など、悲痛な状況が伝わってくる。
帝国データバンクではこうコメントしている。
「取引先の理解を得られないことや顧客離れへの懸念のほか、急速な円安進行などによる原材料費の上昇などに価格転嫁が追い付いていないことを背景に、全体の価格転嫁率は36.6%にとどまった。政府には価格転嫁支援の強化に加え、物価の高騰による影響を受けているすべての企業に支援が行き渡る対策の実施が求められよう」
調査は、2022年9月9日~13日、全国の企業にアンケートを送り、1649社から有効回答を得た。うち大企業は211社(12.8%)、中小企業は1438社(87.2%)だった。
(福田和郎)