コーセーの株価が2022年9月29日の東京株式市場で一時、前日終値比690円(5.0%)高の1万4600円まで上昇し、21年11月以来、約10か月ぶりの高値となった。
30日にはさらに一時、1万4960円まで値上がりした。株価はコロナ後の収益拡大期待から足元で上昇基調にあったところ、UBS証券が29日配信のリポートで、コーセーの投資判断を3段階で真ん中の「中立」から最上位の「買い」に格上げしたことが材料となった。UBSは、目標株価も1万3400円から1万6300円に引き上げた。
国内が需要回復...高価格帯ブランド「デコルテ」など好調
それではまず、コーセーの業況を8月10日発表の2022年6月中間連結決算で確認しておこう。
グループ内各社の会計期間変更により単純比較できない前年同期比はコーセーの試算だが、売上高は前年同期比4.4%増の1306億円、営業利益は81.5%増の72億円、最終利益は2.9倍の88億円だった。
コロナによるロックダウンの影響を受けた中国は減収となったが、国内は需要回復で販売が増えた。とくに、主力の化粧品事業は高価格帯ブランドの「デコルテ」などが好調で収益拡大をけん引した。
コーセーの海外売上高比率は2021年12月期で40%程度と小さくないものの、国内の復調は全体の業績を左右するだけに、投資家の注目を集めている。投資判断を格上げしたUBSも国内事業の回復に着目していた。
通期の業績予想、増収増益見込み...中国もいずれコロナ明けで
ただ、コーセーは中間決算と同時に発表した通期の業績予想で、営業利益について、従来予想から20億円少ない200億円に下方修正した。
原材料価格の上昇や円安を踏まえた。他の項目は、変更しなかった。もっとも、コーセー試算の前期比では下方修正した営業利益でも27.6%増だ。
据え置いた売上高は8.9%増、最終利益は48.2%増で、利益は二桁増の増収増益を見込む。多くの日本企業が苦しむ原材料高と円安に見舞われながらも、好決算を見込んでいるのだ。
中国もいずれ「コロナ後」の世界に戻るであろうことから、中国の減収も一時的なものとみることができる。
課題は、中価格帯の化粧品で苦戦が続いていること。百貨店の店頭などで販売される高価格帯は新規顧客も獲得しているが、ドラッグストアや量販店で販売される中価格帯の回復が遅れている。
このあたりが改善されていることが確認されれば、株価上昇に、されに勢いがつく可能性もあると言えそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)