参加は自主性に委ねられ、罰則もない現状...さらなる制度の改善を
今回の市場開設は、この方針に沿ったものだ。ただ、上限を設けて排出削減を義務づけるEUとは異なり、参加は企業の自主的な取り組みに委ね、罰則もない。
しかし、EUは環境規制が甘い国からの輸入に課税する「炭素国境調整措置」も検討している。日本企業の対応が遅れれば、国際競争力を失うおそれがある。
市場がきちんと機能するには、公正な価格決定が欠かせない。
仮に、クレジットの価格が排出削減費用を下回れば、企業は排出削減努力をせずにクレジットを買えばいいことになり、排出削減は進まず、技術革新も進まない。そうならないようにするためには、市場参加者を増やし、適正な価格形成がされなければならない。
企業の自主性を重視すれば、取り組みが甘い企業が多くなって、排出削減が進まないだろう。厳しく削減目標を設定した企業が不利益になるようでは、長続きしないのは当然だ。
このため、経産省も、将来的にEUのような制度は避けられないとみており、今回の取り組みは本格導入に向けたワンスッテプという位置づけだ。
企業に参加を義務付けるなどしていくためには、企業に課す削減目標の設定が妥当か、業種ごとに定期的に技術開発レベルなども踏まえて、評価・検証する仕組みが求められる。
また、海外ではたとえば森林吸収分の算定で森林管理が不十分な「幽霊事業」の排出量も取引されるといった問題も指摘されており、排出権の「認証」の妥当性も問われそうだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)