日本は欧米経済の減速をこれからが強く受ける
「今後、世界経済減速の荒波をかぶる公算が大きい」と懸念を示したのが第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏だ。
熊野氏はリポート「海外減速に引きずられて業況悪化~2022年9月の日銀短観~」(10月3日付)のなかで、とくに大企業・製造業の価格判断DI(指数)に注目した(図表2参照)。商品や販売や仕入れ価格を表わす指標だが、予想以上にコスト増を価格に転嫁できていない実態が明らかになったのだ。
熊野氏は驚いてこう指摘する。
「本当に意外だったのは、素材業種で販売価格DIが前回比マイナス2ポイント低下、仕入価格DIが前回比マイナス5ポイント低下となったことだ。商品市況の一部が落ちていることは知っていたが、短観ベースでもそれが大きく表れるとは思ってもみなかった。皆がインフレで騒いでいても、限界的な変化ではデフレ圧力が表れてきている。これは、米利上げ効果が思っていたよりも大きな影響になってきたからだと言える」
とくに、海外で販売・仕入するグローバル化した素材業種では「デフレ」ともいえる値下げ圧力が強かった。それだけ、海外での景気後退が進んでいるということだ。
だから、熊野氏は「これから来る世界経済悪化」を予感させるとしてこう結んでいる。
「大企業・製造業の業況判断DIが3期連続悪化したことは、景気後退リスクが徐々に強まってくることを予感させる。追加的な米利上げは、さらに米経済をスローダウンさせるだろう。その本格的な下押し圧力は、短観の事業計画には、まだ織り込まれていないと思う。
最近のOECD(経済協力開発機構)の各国景気予測(9月)では、日米欧のうち金融引き締めを行わない日本の成長率が2023年前年比1.4%と、米国(同0.5%)、ユーロ圏(同0.3%)を大きく上回っていた。これは、日銀が引き締めを行わず、FRB(米連邦準備制度理事会)とECB(欧州中央銀行)が引き締めをするからだ。
しかし、日本は(中略)欧米経済の減速をこれからが強く受けるであろう。今回の短観では、そうした海外需給の悪化が予想以上に敏感に日本企業の景況感に悪影響を与えていることがわかった。そうした負の効果に対して、政府と日銀がどのような政策運営をしながら、国内需要の堅調さを守っていくのかが課題になる」
(福田和郎)