バラツキが大きく、国内経済を引っ張る牽引役がいない
「景況感の停滞が濃厚になっている」と指摘したのは、ニッセイ基礎研究所上席エコノミスト上野剛志氏だ。
上野氏はリポート「日銀短観(9月調査)~大企業製造業の景況感は3期連続の悪化で停滞感強い、設備投資計画は堅調も下振れリスク大」(10月3日付)のなかで、大企業の業況判断のグラフ(図表1)を示しながら、こう述べた。
「注目度の高い大企業製造業については、足元の景況感(プラス8)が市場予想(プラス11)を下回ったうえ、先行きの景況感(プラス9)も市場予想(プラス11)を下回った。大企業非製造業については、足元の景況感(プラス14)は市場予想(プラス12)を上回ったものの、先行きの景況感(プラス11)は市場予想(プラス14)を下回った」
市場予想より悪い結果が出て、景気の停滞が濃厚だというわけだ。とくに、先行きに対する不安が顕著に表れた。その理由について上野氏は、次の理由を挙げている。
(1)製造業では、原材料・エネルギー高が続くこと、利上げによる欧米の景気後退の影響、中国での新型コロナによる都市封鎖再発の懸念、国内では冬場の電力不足への不安などが重荷になっている。円安の恩恵を受けた自動車・鉄鋼、逆に被害を受けた非鉄金属、化学、紙パルプなど業種によるバラツキが大きく、牽引役に乏しい。
(2)非製造業では、新型コロナの感染縮小により水際対策の緩和、全国旅行支援策などに伴う人流回復への期待感が現れたが、原材料・エネルギー高によるコスト高や国内経済減速への警戒感のほうが、それを上回った。
そして、今のところ設備投資計画が堅調さを維持していることは好材料だが、内外経済をめぐる下振れリスクが最近さらに高まっており、計画が下方修正されるリスクも相応に高く、「計画の実現性については楽観視できない」と結んでいる。