身近な商品の物価高、個人消費全般への逆風に
同欄では、慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(国際経済学)は、
「製造業大企業の景況感は足元低下したものの3か月先の見通しは改善している。だが、原材料価格の高騰から利益マージンは悪化した。国内需要も停滞しているが、昨年堅調だった海外需要はかなり減速する見通しだ。一方、非製造業大企業については、足元は改善しているが3か月先はいくぶん悪化している」
と分析。その理由をこう説明した。
「不動産や建設が比較的堅調な中、小売や個人サービスが悪化しており国内需給判断もいくぶん悪化しており、物価の高騰の影響があるようだ。前向きの動きとしては全産業で設備投資が活発で、人手不足感もみられること、および企業利益が全産業で上方修正がみられることである。全体として悪い内容ではないが個人消費の先行きについては注視している」
一方、同欄では、みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏が厳しい見方を示した。
「大企業の景況感の変動は、今回は製造業、非製造業ともに、1ポイントという小さな幅にとどまった。追い風と逆風の双方が吹き付ける中で、そうした結果になったと考えられる。製造業では、供給制約が部分的に緩和し、鉱工業生産が3か月連続で増加。業種・企業によっては、円安差益が収益の押し上げ要因。しかし、原材料費増加や輸送費上昇が(製造業に限らず)収益への強い逆風で、コスト高を販売価格にいかに転嫁していくかが課題」
としたうえで、非製造業に関しては、
「新型コロナ感染拡大対応のまん延防止等重点措置が全面解除され、人々の行動は自由度を増した。だが、身近な品目の価格高騰が実質ベースの所得減少を通じ、個人消費全般への逆風になっている」
と、物価高がネックになっていると指摘した。