ポンド危機は「為替の世界のいじめ」...エコノミストが指摘、岸田政権の総合経済政策が「いじめ」に遭わない3つの方法

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日米金利差拡大より、貿易赤字悪化のほうが問題

   ところで、日米金利差の拡大が円安の進行要因と言われているが、吉崎氏は貿易収支の急速な悪化を2020年と2022年の「輸入品目ランキング」がすっかり様変わりした図表2で示しながら、「実需の円売り」のほうが問題だと指摘する。

(図表2)輸入品目ランキングは様変わり(双日総合研究所の作成)
(図表2)輸入品目ランキングは様変わり(双日総合研究所の作成)

   2022年は通年で過去最大の15.8兆円の貿易赤字になる見込みだが、あらためて図表2を見ると、今年上半期の輸入増のうち、ざっくり半分が鉱物性燃料の増加分だ。原油が2倍増、LNG(液化天然ガス)が2倍増、石炭が3倍増だ。

   ところが数量ベースでみると、前年(2021年)とは大差がない。単純に、値段が上がっているのだ。ウクライナ戦争に伴うエネルギー価格の上昇が、かくも日本経済に暗い影を落としているわけだ。

   この貿易収支の悪化を改善しないと、円安にストップをかけられない。そこで吉崎氏は、次の3つの地道な政策を提案する。

(1)輸出を伸ばす。最近の月あたり8兆円台の輸出は過去最高水準であり、円安メリットをそれなりに享受している。日本のモノづくりの力はまだ失われていない。
(2)化石燃料の使用量を減らす。近年の日本経済は、「石油価格が高い年は貿易赤字、安い年は貿易黒字」という傾向が続いており、鉱物性燃料の価格に振り回されるのは望ましいことではない。
(3)インバウンドを増やす。2019年に3188万人まで増えた訪日外国人客数は、21年には24万人まで激減した。長らく続いた「コロナ鎖国」を開放に向けるのは正しい方向だ。観光需要こそ、日本経済が円安メリットを享受するもっともわかりやすい手法だ。遠回りだが、円安防止につながる。

(福田和郎)

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