厚生労働省が2022年9月9日に公表した「2021年国民生活基礎調査」では、日本の少子高齢化の姿と課題が浮き彫りになっている。
この30年での変化...「65歳以上高齢者世帯」4.9倍増&「子どもいる世帯」1人は5.8ポイント減、2人は11.1ポイント減
2021年6月3日現在の全国の世帯総数は5191.4万世帯となっている。その世帯構造を見ると、「単独世帯」が1529.2万世帯と全世帯の29.5%を占め、最も多い。単独世帯は、1989年(平成元年)に20.0%に達し、その後は一度も減少することなく、増加を続けている。
その大きな要因となっているのが、単独世帯の高齢者世帯の増加だ。
世帯類型を見ると、「65歳以上の高齢者世帯」は1506.2万世帯で全世帯の29.0%を占める。1989年(平成元年)に305.7万世帯だった高齢者世帯は、2021年には1487.8万世帯と4.9倍に増加した。
高齢者世帯のうち単独世帯は742.7万世帯と48.6%を占めている。したがって、全世帯に占める高齢者の単独世帯は14.3%になる。また、全単独世帯のうち48.6%が高齢者の単独世帯ということだ=表1。
つまり、3軒に1軒は高齢者だけの世帯で、10軒に1.5軒が高齢者の一人暮らし世帯ということになる。ちなみに、高齢者世帯の性別では、男性が35.7%、女性が64.3%。このことから、高齢女性の一人暮らしが非常に多いことがわかる。
一方、子どものいる世帯は1073.7万世帯で全世帯の20.7%となっている。「子ども1人」の世帯は502.6万世帯で全世帯の9.7%。「子ども2人」の世帯は426.7万世帯で全世帯の8.2%。「子ども3人以上」の世帯は144.4万世帯で全世帯の2.8%だ。
1989年(平成元年)と比較すると、子ども1人は15.5%から9.7%に、2人は19.3%から8.2%に、3人以上は6.8%から2.8%にまで減少している。2007年に「子ども1人」世帯数が「子ども2人」世帯数が上回り、一人っ子世帯が主流になった=表2。
「高齢者世帯」と「子どものいる世帯」所得状況、生活意識を比べると...
では、各世帯における所得の状況はどうなっているかを、2020年1月1日から12月31日の1年間の所得で見ていこう。
1世帯当たり平均所得金額は、「全世帯」が564.3万円、「高齢者世帯」が332.9万円、「高齢者世帯以外の世帯」が685.9万円、「児童のいる世帯」が813.5万円となっている=表3。
所得の分布状況では、「300~400万円未満」が13.4%、「200~300万円未満」が13.3%、「100~200万円未満」が13.1%の順で多く、平均所得金額564.3万円以下は61.5%を占める。
つまり、平均所得金額は高額所得に引っ張られて高くなっているわけで、中央値では440万円になる。中央値とは、所得を低いものから高いものへと順に並べて2等分する境界値だ。
世帯別では高齢者世帯の平均所得金額以下の割合が87.9%と非常に高く、中央値は271万円に過ぎない。これは、高齢者の貧困が如実に表れる結果となっている。一方、子どものいる世帯では平均所得金額以下の割合は29.8%で、中央値は722万円と高い=表4。
ところが、2021年7月8日現在の生活意識では、意外な結果が表れている。
全世帯の生活意識として、「大変苦しい」と「やや苦しい」を足した「苦しい」は53.1%。「普通」は41.8%。「大変ゆとりがある」と「ややゆとりがある」を足した「ゆとりがある」が5.0%となっている。
これに対して、もっとも所得金額の低い高齢者世帯では、「苦しい」は50.4%。「普通」は44.9%。「ゆとりがある」が4.7%と、全世帯よりも「苦しい」が低く、「普通」が上回っている。
一方、最も所得金額の高い子どものいる世帯では「苦しい」は59.2%。「普通」は36.6%。「ゆとりがある」は4.2%と、最も生活が厳しい状況となっている。
そこには、高齢者は低所得ながらも、つつましい生活を送ることで、ある程度の生活が営めている一方で、子育て家庭では所得が高くとも、支出が多いことで、苦しいという生活感を持っていることになる。
何を贅沢と感じるかと同じように、生活意識の捉え方はさまざまだが、国は少なくとも全ての世帯が「ゆとりがある」と思えるようになる政策を実施していく必要があろう。