24年ぶり為替介入など、「タイミング」の悪さ重なる
しかし、政府関係者は「あまりにタイミングが悪かった」と悔やむ。
訪米中の最大の目玉だった新型コロナウイルス対策の水際措置の大幅緩和は、NYSEの講演前に表明済み。NYSEで触れた具体的な投資促進策は、少額投資非課税制度(NISA)を恒久化する意向を示したことくらいで、仕込み不足は否めない。
さらに間が悪かったのが、政府・日銀は講演の直前、急激な円安を食い止めるため24年3か月ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切ったことだ。
市場に驚きが広がる一方で、「日本の単独介入ではほとんど効果がない」「主要経済国が安易に為替市場に介入すべきでない」など、介入そのものに対する米国内の評価は散々だ。岸田氏がいくら「経済通」をアピールしても実態が伴っていないと判断されたかたちだ。
そもそも岸田氏は、首相就任直後から金融所得課税の強化に意欲を見せるなど、市場関係者に警戒を持って受け止められてきた経緯がある。
そのイメージを払拭しようと、講演では「『新しい資本主義』とは日本経済を再び成長させるための包括的なパッケージだ」などと説明したものの、その抽象的な概念が海外の市場関係者に伝わるとはとても思えなかった。
市場重視のアベノミクスの方向転換を図りながら、いかに新たな投資資金を呼び込むか。岸田氏に課されたハードルはあまりに重いことを印象付けた講演になった。(ジャーナリスト 白井俊郎)