輸入物価指数と消費者物価指数が上昇する要因は何か?
企業物価指数の上昇は、消費者物価指数の上昇につながる。総務省の消費者物価指数の動きと、輸入物価指数の動きを重ねて見ると、見事なまでにシンクロして動いていることがわかる。消費者物価指数の生鮮食品を除く総合指数は、2021年1月の99.8から2022年8月には102.5に上昇している=表3。
ただ、輸入物価指数が2021年1月から2022年8月の間に76.0ポイントも上昇したのに比べ、消費者物価指数の上昇幅は2.7ポイントにとどまっている。これは、輸入物価の上昇分すべてが、消費者価格(消費者物価)に反映されるわけではないからだ。
なぜなら、輸入物価の上昇に対して、企業は消費者価格の上昇を抑えようと努力する。しかし、その範囲を超えると「値上げ」が実施される。
では、何が輸入物価指数と消費者物価指数を上昇させているのか。
そこで、2021年1月からの外国為替相場(ドル・円レート)の動きを見てみよう。
2021年1月時点でドル・円レートは1ドル=105円以下の水準にあった。その後、ジリジリとドル高・円安が進むが2021年4月から10月までは1ドル=110円程度と5円程度のドル高・円安、2021年10月から2022年3月までは1ドル=115円程度と10円程度のドル高・円安水準だった。
そして、ここから急激なドル高・円安が進行し、2022年9月22日には、ついに1ドル=146円直前までドル高・円安が進み、1998年6月以来、約24年ぶりのドル高・円安水準となった=表4。
さて、ここまで説明した輸入物価指数と消費者物価指数の動きを思い出していただきたい。
輸入物価指数と消費者物価指数は緩やかに上昇を続けてきたが、その間、ドル・円レートも比較的に緩やかな上昇を辿っている。そして、輸入物価指数も消費者物価指も、2022年3月以降に急激に上昇しており、ドル・円レートも2022年3月から急激なドル高・円安が進んでいる。
つまり、2021年3月から2022年3月にかけての物価上昇の主因はドル高・円安にあるのではなく、資源・エネルギー価格の上昇によるところが大きい。だが、2022年3月以降の物価上昇は、急激なドル高・円安進行によるものであることがわかる。
では、今後の物価見通しはどうなるのか。
輸入物価指数と消費者物価指数は、リンクして動くことは前述した。ただし、企業努力や製造期間など、さまざまな理由により輸入物価指数と消費者物価指数の動きには「タイムラグ」がある。
輸入物価指数と消費者物価指数の前年同月比の動きを重ねて見ると、輸入物価指数の上昇が先行し、消費者物価指数の上昇が後を追っていることがわかる=表5。