「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
米国の利上げをめぐり、株価が乱高下するそのときこそ...
「週刊東洋経済」(2022年10月1日号)の特集は、「株の道場 短期狙い&長期期待で仕込む株」。米国の利上げをめぐり、株価は乱高下している。そういうときこそ、短期の値幅取りねらいの好機だ。一方では、大化け株候補を長期志向で仕込むのにもよい。両方の投資法を解説している。
日本株は米国株や欧州株に比べ年初来の下落幅は小さく、利益予想も米国企業より日本企業のほうが良好だ。9月16日発売の「会社四季報」22年4集では、今期営業収益の予想が前号に比べて上方修正された企業が1004社に上ったというのも好材料だ、としている。
修正率1位は、エイベックス。ライブ公演の増加が主因だ。2位のサンリオは、物販事業が黒字し、テーマパークも変動価格制の導入などで黒字復帰した。
修正額2位は、信越化学工業だ。柱の塩化ビニール樹脂は、主力の米国市場で歴史的な高値水準が続く。もう1つの柱、シリコンウェハーも半導体の増産に対し、供給が追いつかない状態だという。ホンダ、スズキ、三菱自動車と自動車メーカーもランクインした。
「四季報」の独自予想が会社計画より強気な銘柄として、オリンパス、INPEX、JT、ダイキン工業、ファナックなどを挙げている。
「四季報」元編集長の山本隆行さんが、「PER(株価収益率)」による短期投資法について解説している。PERは低いほど株価が割安とされる。すべての銘柄に共通して目安となる絶対水準はないが、過去実績のPERは役に立つそうだ。
最高益なのに安値PER割れ&近辺の超割安銘柄として、計測機器メーカーのトプコン、安川電機、デンソー、西松屋チェーンなどを挙げている。1位のトプコンは、今・来期とも最高益を更新し、株価は今の割安な水準が訂正され上昇するかもしれない、と予想する。
◆長期的な視点で「大化け株候補」は?
一方、長期的な視点で「大化け株候補」を探すにはどうしたらいいか。山本さんは「売上高の変化を追いかけていくのがコツだ」と書いている。目安は連続15%以上の増収率。
大増収が続く企業のランキングには、SMS配信のアクリーク、半導体検査装置のレーザーテック、不動産ファンドのクリアルなどがランクインしている。
「大化け株候補」は、年収アップ企業の中から探すのもコツだという。好例になるのが、ITコンサルティング企業のベイカレント・コンサルティングだ。2017年2月期の年収は875万円で、当時の株価は1200円程度だった。その後、毎期のように年収アップを続け、21年2月期には年収1101万円となり、株価は21年9月に6万3400円と、株価50倍超へと大化けしたという。
このランクには、ペンタブレットの大手、ワコムやGMOグローバルサイン・ホールディングスなどが入っている。
今後の投資戦略として、UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント日本地域最高投資責任者の青木大樹さんは、短期は山あり谷ありだが、
「有望銘柄を下値で拾えれば投資効果は上がるだろう。注目テーマは、観光などの経済活動再開関連、円安の恩恵を受ける輸出関連、安全保障に絡むサイバーセキュリティー関連などだ」
と、している。
一方の長期では、「優良な日本株を選べば米株超えの投資成績」と、野村アセットマネジメントシニア・ストラテジストの石黒英之さん。時価総額が大きく流動性が高いTOPIX100のうち、直近10期の純利益増加額が上位の20社に均等投資すると、この10年で3.4倍と米S&P500種株価指数の2.7倍を上回るというのだ。
半導体製造装置、自動車、電機、通信、金融などの大手が含まれる。石黒さんはキャッシュ比率30%という投資法を行い、機械的に売買でき、リターンが格段に上がったという。
「10年先の未来を考えるのは決して難しいことではない」というのは、過去の実績を調べるからだ。過去10年、さまざまなショックがあっても減益が2~3回以下であれば、外的要因に依存せず、変われる力がある企業と見ることができるという。
ゼネコン、物価上昇で「請け負け」に
「週刊ダイヤモンド」(2022年10月1日号)の特集は、「沈むゼネコン 踊る不動産」。ゼネコン業界は建設ラッシュが一巡し、激しい受注競争に入るとともに物価上昇で沈没の危機に。一方、金融緩和を追い風に好調だった不動産業界にも、金融引き締めによる異変が生じているという。2つの業界の「バブル崩壊前夜」を追っている。
日本一高いビルとして2027年度に完成予定の「Torch Tower」(東京・常盤橋)を巡る話題から書き出している。三菱地所が手掛け、清水建設が施行の優先交渉権を獲得したが、清水建設の社内は「お通夜ムード」だというのだ。
おりからの資材高で、建設費1500億円ともいわれる「Torch Tower」の工事は、赤字必至と見られるからだ。施主の三菱地所と清水建設の間で、激しい価格交渉が行われているという。
すでに発注した案件では、「資材高騰の上振れは認めない」とデベロッパーは強気だ。2011年の東日本大震災以降、切れ目なく特需が続いたゼネコンは、採算重視の選別受注に徹し、デベロッパー側は煮え湯を飲まされた。そのお返しの番だという。ゼネコンがデベロッパーに頭が上がらない「請け負け」体質に戻った、と見ている。
三菱商事が「価格破壊」で総取りした秋田県能代市沖など3エリアでの洋上風力発電プロジェクトについても、建設工事をになう鹿島との間で、コスト負担の綱引きが繰り広げられそうだという。
エネルギーとゼネコンの双方の業界から「総額で数千億円の赤字」という見立てが出ている。どちらが赤字をかぶるかで、双方の業界から正反対の声があがっているという。
推定で総額7000億円程度のプロジェクトだが、資材高、円安、輸送費高騰の三重苦が襲った。「一定程度のコスト負担をシェアせざるを得ないだろう」という、あるゼネコン首脳の声を紹介している。鹿島にとって高い授業料になりそうだ。
三井不動産のビッグプロジェクト「東京ドーム再開発」に大林組が意欲を示しているが、もともと三井不動産と結びつきが強いのは鹿島と清水建設。また、現在の東京ドームを施行したのは竹中工務店と、ゼネコンのバトルが起きそうだ、という記事にも注目。
一方、大阪・関西万博工事は赤字必至なため、主会場に関する建設工事の入札では、大手ゼネコンが勢ぞろいすることはなく、在阪の準大手・中堅が主導する共同企業体の姿もなかったという。急速な円安・資源高を考慮していない建設費では、「火中の栗を拾う」ようなものだと、にべもないのだ。
マンション管理、2つの制度スタート
「週刊エコノミスト」(2022年10月4日号)の特集は、「マンション管理必勝法」だ。4月からスタートしたマンション管理に関する2つの制度とその影響をまとめている。
1つ目はマンション管理業協会がつくった「マンション管理適正評価制度」だ。個々の管理状況や管理組合の運営状況をチェックし、100点満点で6段階で評価する。9月13日時点で全国で35件の管理組合が評価を受け、うち18組合が最高等級(星5つ)を獲得した。
重要なポイントとなる修繕積立金は、年数がたつごとに金額が増える「段階増減方式」より「均等積み立て方式」の方が加点される。
「優れている(星4つ)」「良好(星3つ)」には、1970年代や80年代に建てられたマンションも少なくないという。
「管理の見える化」が進めば、中古市場で「築年数」「駅徒歩」といった数値化しやすいものだけで判断されやすかった中古マンションの評価が大きく変わる可能性があるらしい。同協会では、3年で1万2000組合の登録を目指している。
2つ目はマンションの管理適正化法に基づく「マンション管理計画認定制度」だ。こちらは都道府県や市、区などの自治体が適正を「認定」するものだ。認定を受けたマンションには「フラット35」の優遇などのメリットもある。ただし、自治体が計画を未作成だと始まらない。大半の自治体では取り組みが遅れている。
一方、どちらの制度も維持管理に関心が低い管理組合を底上げできるかは不透明だと見ており、熱心なマンションとそうでないマンションとの二極化が懸念されるようだ。
多くのタワマンが今年、大規模修繕工事を迎えるが、建築資材や人件費が高騰し、資金不足が心配されている。「安い積立金にだまされるな」と警告する記事は、タワマンの住民にとって恐怖だろう。
また、新制度どころではなく、管理組合の赤字という問題もあるようだ。電気料金の値上げなどで収支が赤字の場合、余剰金を食い潰せば、数年先には赤字決算に転落する恐れもあり、管理費の値上げも予想されると警告している。
(渡辺淳悦)