ゼネコン、物価上昇で「請け負け」に
「週刊ダイヤモンド」(2022年10月1日号)の特集は、「沈むゼネコン 踊る不動産」。ゼネコン業界は建設ラッシュが一巡し、激しい受注競争に入るとともに物価上昇で沈没の危機に。一方、金融緩和を追い風に好調だった不動産業界にも、金融引き締めによる異変が生じているという。2つの業界の「バブル崩壊前夜」を追っている。
日本一高いビルとして2027年度に完成予定の「Torch Tower」(東京・常盤橋)を巡る話題から書き出している。三菱地所が手掛け、清水建設が施行の優先交渉権を獲得したが、清水建設の社内は「お通夜ムード」だというのだ。
おりからの資材高で、建設費1500億円ともいわれる「Torch Tower」の工事は、赤字必至と見られるからだ。施主の三菱地所と清水建設の間で、激しい価格交渉が行われているという。
すでに発注した案件では、「資材高騰の上振れは認めない」とデベロッパーは強気だ。2011年の東日本大震災以降、切れ目なく特需が続いたゼネコンは、採算重視の選別受注に徹し、デベロッパー側は煮え湯を飲まされた。そのお返しの番だという。ゼネコンがデベロッパーに頭が上がらない「請け負け」体質に戻った、と見ている。
三菱商事が「価格破壊」で総取りした秋田県能代市沖など3エリアでの洋上風力発電プロジェクトについても、建設工事をになう鹿島との間で、コスト負担の綱引きが繰り広げられそうだという。
エネルギーとゼネコンの双方の業界から「総額で数千億円の赤字」という見立てが出ている。どちらが赤字をかぶるかで、双方の業界から正反対の声があがっているという。
推定で総額7000億円程度のプロジェクトだが、資材高、円安、輸送費高騰の三重苦が襲った。「一定程度のコスト負担をシェアせざるを得ないだろう」という、あるゼネコン首脳の声を紹介している。鹿島にとって高い授業料になりそうだ。
三井不動産のビッグプロジェクト「東京ドーム再開発」に大林組が意欲を示しているが、もともと三井不動産と結びつきが強いのは鹿島と清水建設。また、現在の東京ドームを施行したのは竹中工務店と、ゼネコンのバトルが起きそうだ、という記事にも注目。
一方、大阪・関西万博工事は赤字必至なため、主会場に関する建設工事の入札では、大手ゼネコンが勢ぞろいすることはなく、在阪の準大手・中堅が主導する共同企業体の姿もなかったという。急速な円安・資源高を考慮していない建設費では、「火中の栗を拾う」ようなものだと、にべもないのだ。