それまでのボードゲームと一線を画した「ラブレター」の衝撃
――福本さんたちの働きかけもあって、ボードゲーム市場が盛り上がっていったのですね。そんなか、2012年に登場したのが「ラブレター」でした。
「ラブレター」は、簡単にいうと、最後まで持っていた手持ちのカードの強弱を競うゲーム。ただし、各カードにはさまざまな「効果」があって、その指示に従わなくてはならない......。だから、山札からカードを引く運、相手が持つカードを推理する力、駆け引きが必要になる。そして、そこが面白い!
福本さん「基本の遊び方では、使うカードの枚数はたった16枚です。ルールはシンプルで(詳しくは『ラブレター』10周年記念プロジェクトの特設サイトなどもご覧ください)、プレイ時間も最短5分くらい。繰り返し遊べて、しかも、いろんな展開が楽しめる――これが大きな魅力だと思います」
福本さん「込み入った話をすると、『ラブレター』以前のボードゲームは、コンポーネントリッチというか、長時間かけて遊ぶスタイルが、どちらかといえば主流でした。それに対して『ラブレター』は一線を画していて、短時間で本格的にプレイできる遊びとして、ボードゲームファンの間でも話題に。また、手軽でルールもわかりやすいから、多くの人に受け入れられたのだと思います。飲み会の最初や、修学旅行でみんなが集まった時に遊んで盛り上がった――そんなお声もよくいただきます」
――さらに、2022年8月には、リニューアル版となる「ラブレター 第2版」が登場して話題になりました。
福本さん「基本の16枚に追加したり差し替えたりして遊べる『追加カード』を用意したことがポイントですね。かねてから、カードの種類を増やして、遊びの幅を広げたいと考えていました。今回それが叶って、『ラブレター』をやり込まれている人にとっても、新しい遊びを体感できるはずです」
――それと、「ラブレター」10周年にあわせ、「ラブレター 10周年記念版」を発売(クラウドファンディング支援者への限定版。受付終了)、23年春にはまだ詳しい情報も明かされていない「ラブレター・ストーリーズ(仮)」の登場も予定されています。
福本さん「実は、『ラブレター』はシンプルなルール設定だったからこそ、カードの『効果』の部分を変えたいろんなバリエーションが国内外で展開されています。なかには、映画『STARWARS』の世界観に浸れるものもあります。そういったさまざまなバリエーションのうち、基本ルールと主要な16のバリエーションルールが楽しめる特別なパッケージが『10周年記念版』となっています」
福本さん「一方の『ラブレター・ストーリーズ(仮)』について。『ラブレター』では、姫に手紙を渡すというストーリー設定があるのですが、このストーリーにフォーカスした商品になる予定です。遊ぶごとに新しい物語に出会える、いろんな結末を楽しめる......そんなストーリーを基盤にしたゲームを開発中です。社内では8月中旬ごろ、初めてテストプレイをしました。ぜひ続報をお楽しみに!」
アークライトでは、国内最大規模のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」を主催しています。この秋も2022年10月29日(土)、30日(日)に開催予定です。ここで、「ラブレター」に匹敵する新たなボードゲームが話題になるかもしれません。そんな「ゲームマーケット2022秋」の見どころは?
<たった16枚で世界を驚かせた!日本発ボードゲーム「ラブレター」10周年...きっかけは、手作りで出展した「ゲームマーケット」だった【後編】/アークライト代表・福本皇祐さんに聞く>続きます。
【後編】では、アークライトの今後の展望、福本さんが働くうえで大事にしている姿勢などもうかがいました。こちらも注目です!
【プロフィール】
福本皇祐(ふくもと・こうすけ)
株式会社アークライト 代表取締役社長
http://www.arclight.co.jp/
1959年生まれ。大学卒業後、1985年ホビージャパンに入社して営業を担当する。1992年遊演体に入社後、同社の新規事業部門を任され、1998年に分社化してアークライトを設立。現在、アナログゲームの企画、開発、製造、出版、卸売り、イベント運営、店舗経営などを行うアナログゲームの総合メーカーとして多方面に事業を展開する。また、日本最大級のボードゲームイベント「ゲームマーケット」の運営も行い、ゲームを通して世界のヒューマンコミュニケーションの拡大を目指している。