たった16枚のカードを使って、運、推理、駆け引きを駆使して、集まったみんなで盛り上がれるカードゲーム「ラブレター」をご存じですか?
ボードゲームデザイナーのカナイセイジさんが手掛けた「ラブレター」は国内外で累計300万セット以上を売り上げ、世界を驚かせた日本発のボードゲームとしてファンが多いことでも知られている。
そんな「ラブレター」が2022年、誕生から10周年を迎えた。このアニバーサリーイヤーを盛り上げようと、リニューアル版となる「ラブレター 第2版」が満を持して登場したほか、10周年記念の企画が続くなど、話題を集めている。
そこで今回、「ラブレター」を見いだした一人、発売元のアークライト代表・福本皇祐さんに、「ラブレター」の魅力を聞いた。
「毎月1つは新作を!」ボードゲーム市場の下地をつくる
――「ラブレター」10周年に先立ち、まずはアークライトの成り立ちや、ボードゲームのこれまでを教えていただけますか。
福本皇祐さん「話せば長くなるので(笑)、ポイントをかいつまんでお話しすると、アークライトの設立は1998年です。前身となったのが、当時、私が所属していたテレビゲーム開発会社のデジタル部門の新規事業部。私が任されていたこの部署を分社するかたちで生まれた会社です(私自身は、その前にいた会社でボードゲームの営業、イベント運営の業務などに10年ほど携わっていました)」
福本さん「分社化前の状況はというと、テレビゲーム開発ではどんどん機能が高まってきていて、開発環境の面で、当時いた開発会社ではそのクオリティーに追いつけなくなりそうな状況でした。
テレビゲームの世界はもう芽がないかもしれないな......そう思っていた1990年代半ばごろ、ゲーム界隈では世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)『マジック:ザ・ギャザリング』の人気が出てきます。日本語版もヒットしました。
それを機に私は、デジタルのテレビゲームではなく、『マジック:ザ・ギャザリング』のような『紙』を使ったアナログの分野でも、革新的なゲームが生まれていることに着目、可能性を感じました。そこで、アナログゲームの事業へと舵を切り、チャレンジすることにしたのです。当初は、TCGの受託事業、テーブルトークRPG(※)の開発、店舗運営などを手掛けていました」
(※)TRPG=会話型RPG。紙や鉛筆、サイコロなどを使って、会話をしながら自分の役割を演じ、ゴールを目指していくゲーム
――いまでは、アナログゲームの総合メーカーとして存在感を発揮するアークライトですが、ボードゲームの事業はいつから?
福本さん「最初に手掛けたのは2005年、アメリカのファンタジーフライト社が出した『ルーンバウンド 第2版』です。ご縁にも恵まれて、ライセンスを取得でき、アークライトから日本語版を発売したのです。ちなみに『ルーンバウンド』は、ごく簡単に言うと、テレビゲームのRPGをボードゲームで楽しめるようなもの、と表現したらわかりやすいでしょうか。この『ルーンバウンド』がかなりヒットしてくれました」
――当時のボードゲーム市場はどんな状況だったのでしょうか?
福本さん「日本ではまだボードゲームをつくるメーカーもあまりなく、したがって売り場もないような状態でした。この時に打ち立てた目標は、毎月1つはボードゲームの新作を出したい、というものでした。そうしたら、ボードゲームファンも毎月目標を持って買ってくれるよね、と。......そんな話を、関係者との交流会でもよく話していました。その後はおかげさまで、弊社でもいくつかのヒット作が生まれ、また、他社も新作をリリースする流れができ、売り場も整っていきました」