OPECプラス、原油減産に転換...冬場のエネルギー不足&価格高騰に警戒 今後の動向なかなか見通せない理由とは?

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   ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的なエネルギー価格高騰のなか、石油輸出国機構(OPEC)と、ロシアなど非加盟の産油国でつくる「OPECプラス」が原油の減産に方向転換した。

   需要が当面は減るとの判断から、価格維持を図ったとみられるが、冬場のエネルギー不足、価格の一段高を警戒する日米欧などは懸念を深めている。

  • OPECプラス、原油減産に転換(写真はイメージ)
    OPECプラス、原油減産に転換(写真はイメージ)
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9月に10万バレル増産も...1か月で終わりに

   OPECプラスは2022年9月5日の会合で、10月の原油生産を現行水準から日量約10万バレル減らすと決めた。

   J-CASTニュース 会社ウォッチも「OPECプラス...原油増産に動くも、その規模は限定的 気になる「原油価格」への影響はどうなるか?」(2022年6月18日付)で報じたように、OPECプラスはコロナ禍からの世界経済の回復に伴い、2021年8月から22年8月まで毎月、段階的に増産してきた。これは、コロナ禍によって20年5月から1年余り実施した減産を、徐々に修正するもので、段階的な増産で、ほぼコロナ前に戻っていた。

   さらに前回8月の会合では、追加で9月に10万バレル増産すると決めた。この決定は、インフレに苦しむバイデン米大統領が7月にサウジアラビアを訪れ増産幅を拡大するよう求めたのを受けたものだった。

   産油国の盟主であるサウジが、ごく小規模の増産で米国に最低限の配慮を示したかたちだったが、増産はわずか1か月で終わり、10月の生産量は8月の水準に戻ることになる。

減産への転換...原油価格の下落基調が影響

   今回のOPECプラスの決定の背景には、世界経済の減速懸念に伴い、原油価格が下落基調をたどっているという事情がある。

   国際的な指標であるニューヨーク原油先物相場の米国産標準油種(WTI)はロシアのウクライナ侵攻に伴い、6月に1バレル=120ドルを超えるまでに高騰したが、最近は80~90ドルで推移している。80ドルを割り込んでいた年初に比べれば高いが、産油国は下落傾向が今後も続きかねないと恐れている。

   具体的な懸念材料は、まず、大消費国の中国経済の動向だ。

   「ゼロコロナ」政策のもと、感染封じ込めのためのロックダウン(都市封鎖)が断続的に実施され、景気減速が鮮明になっている。欧米でも、物価高騰に対応して利上げが加速しており、景気が今後は落ち込んでいくのは必至との見方が広がっている。

   米国では6月に一時ガソリンの小売り価格が初めて1ガロン=5ドルを超えるなど、あまりの価格上昇でさすがに消費が鈍化している。

   需要の低迷で、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2022年10~12月期に原油は日量100万バレル程度の供給過剰幅になり、23年まで供給過剰が続くという。

   さらに、イラン核合意の再建交渉の行方も注目される。交渉が進展すれば、事実上、国際的に締め出されているイラン産原油が市場に復帰し、さらに需給が緩む可能性があるのだ。

神経とがらせる日米欧...ロシア産石油の輸入価格への上限設定は機能するか?

   一方、日米欧などはエネルギー価格上昇によるインフレという共通の困難を抱えているだけに、今後の需給と価格の動向に神経をとがらせている。

   注目されるのは、主要7か国(G7)が合意した12月からのロシア産石油の輸入価格への上限設定。対ロ制裁の一環でロシア産原油の輸入停止を決めているが、インドや中国が輸入を増やすなどロシアの輸出は大きく減らず、価格高騰でむしろ輸出収入は増えたとの分析もあるため、ロシア産の価格に上限を設けて打撃を与えようとしているのだ。

   ただ、実効性は不透明だ。

   ロシアは上限価格を設定する国には売らないと反発し、実際にロシアが輸出を制限すれば需給が逼迫しかねない。もちろん、ロシアも価格上昇のプラス面だけでなく、輸出量が減るマイナス面もありえるだけに、両者を天秤にかけることになる。

減産は世界需要の0.1%程度、相場への影響は限定的か

   こうしたさまざまな要素、多くの国の思惑が入り乱れ、原油価格の今後の動向はなかなか見通せない。

   OPECプラスの今回の減産は世界需要(日量1億バレル程度)の0.1%程度にすぎず、相場への影響は限定的という見方で、専門家は一致するが、先行きについて意見は分かれる。

   あるエコノミストは、「OPECプラスが、減産に機動的に取り組んで価格を支える意思を明確にした意味は大きく、原油価格は年末に向け1バレル=90ドル程度で高止まりする」とみる。

   別のエコノミストは「暖房需要が高まる冬にかけ、価格が再び100ドルを突破することも考えられる」と指摘する。

   他方、「需要低迷による供給過剰は2023年前半にかけて続くとみられ、欧米が原油の調達先をロシア以外に切り替えが進めば価格は現状より下がっていく」(石油アナリスト)との声もある。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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