減産への転換...原油価格の下落基調が影響
今回のOPECプラスの決定の背景には、世界経済の減速懸念に伴い、原油価格が下落基調をたどっているという事情がある。
国際的な指標であるニューヨーク原油先物相場の米国産標準油種(WTI)はロシアのウクライナ侵攻に伴い、6月に1バレル=120ドルを超えるまでに高騰したが、最近は80~90ドルで推移している。80ドルを割り込んでいた年初に比べれば高いが、産油国は下落傾向が今後も続きかねないと恐れている。
具体的な懸念材料は、まず、大消費国の中国経済の動向だ。
「ゼロコロナ」政策のもと、感染封じ込めのためのロックダウン(都市封鎖)が断続的に実施され、景気減速が鮮明になっている。欧米でも、物価高騰に対応して利上げが加速しており、景気が今後は落ち込んでいくのは必至との見方が広がっている。
米国では6月に一時ガソリンの小売り価格が初めて1ガロン=5ドルを超えるなど、あまりの価格上昇でさすがに消費が鈍化している。
需要の低迷で、国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2022年10~12月期に原油は日量100万バレル程度の供給過剰幅になり、23年まで供給過剰が続くという。
さらに、イラン核合意の再建交渉の行方も注目される。交渉が進展すれば、事実上、国際的に締め出されているイラン産原油が市場に復帰し、さらに需給が緩む可能性があるのだ。