上場企業の財務諸表から社員の給与情報などをさぐる「のぞき見! となりの会社」。今回取り上げるのは、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスです。なお、餃子専門店「大阪王将」を展開するイートアンドHDとは別の会社です。
王将フードサービスは、1967年に京都に1号店を開店。2013年に東証一部上場、現在はプライム市場へ移行。直営店536店、フランチャイズ(FC)加盟店198店の計734店舗(2022年3月末現在)を展開しています。
価格改定に成功、「過去最高売上」更新目指す
それではまず、王将フードサービスの近年の業績の推移を見てみましょう。
王将フードサービスの売上高は、2020年3月期まで右肩上がりに伸びていましたが、期の終わりからコロナ禍の影響を受けはじめ、翌2021年3月期には緊急事態宣言の発令などを受けて、大幅減となりました。
そのような中でも、感染対策を徹底した店舗運営やテイクアウト需要への対応などが功を奏し、2021年3月期の下期からは減収ながら増益を達成。2022年3月期には、売上利益ともに大きく回復しています。
さらに、今期2023年3月期の第1四半期は、前年同期比で売上高11.9%増、営業利益同28.1%増と好調。2022年8月の月次売上高(9月2日発表の速報版)では、過去最高売上を記録したコロナ前の2019年8月とほぼ同水準まで回復しています。
そして、「餃子の王将」では5月14日に、看板メニューの餃子を220円から240円(ともに西日本の本体価格。東日本の本体価格は240円から260円)へ値上げするなど、約2割の商品を20円から30円値上げする価格改定を行っていますが、それ以降も客数・客単価は継続して前年を上回っています。原材料の高騰を反映した「値上げ」に成功した例といえそうです。
なお、2023年3月期の業績予想は、売上高が前期比6.2%増の900億2900万円と過去最高、営業利益が同8.0%増の75億1600万円となる見通しです。
テイクアウト・デリバリーが好調
王将フードサービスは「中華事業」の単一セグメントですが、2022年3月期決算説明会資料には、直営店における「店内飲食」と「テイクアウト・デリバリー」の内訳が記されていました。
コロナ禍に直撃された2021年3月期は、店内飲食が489億7100万円、テイクアウト・デリバリーが246億800万円。2022年3月期は、店内飲食が469億9900万円と前期比で減少しましたが、テイクアウト・デリバリーは302億1600万円と大きく増加しています。
客数も、2022年3月期の店内客数が前期比2.2%減だったのに対し、店外客数は同16.8%増と大幅増。客単価は前期比24円増の1066円まで上昇しました。これは、コロナ前の2020年3月期の952円を大きく上回っています。
平均年収523.9万円、平均勤続年数10.8年
王将フードサービスの2022年3月期末の従業員数は、単体2240人、連結2292人。
王将フードサービスの平均年間給与(単体)は、2022年3月期は523.9万円。平均年齢36.2歳、平均勤続年数10.8年です。平均年齢と平均勤続年数はゆるやかな右肩上がりなので、社員は定着し、長年働ける職場といえそうです。
従業員数(単体)は、2018年3月期末の2,177人から、2022年3月期末の2,240人まで右肩上がりに伸びており、コロナ禍でも人員削減は行われなかったと見られます。
平均年間給与も右肩上がりですが、コロナ禍の直撃を受けた2021年3月期に凹みがあるのは仕方のないところでしょう。もっとも、2022年3月期の決算説明会資料には「月例給の引き上げを9年連続して継続」とあり、2021年3月期の凹みは賞与の調整によるものと見られます。
また、同資料によると、2022年3月期には「新生活支援金」と「コロナ功労金」が支給されたとあります。金額は分かりませんが、コロナ禍で苦労した従業員に会社がねぎらいの気持ちをあらわしたといえるでしょう。
王将フードサービスの採用サイトを見ると、新卒採用のほか、営業部門・製造部門・管理部門での中途採用の募集が行われています。販売促進の求人は、基本給が18万7500円~27万5000円。プラスして食事手当が月に7500円つきます。
賞与は年2回支給。家族手当、食事手当、車手当、住宅手当、通勤手当、時間外手当、休日勤務手当、深夜勤務手当、役職手当、紹介手当といったさまざまな手当があります。労働組合もあります(UAゼンセン餃子の王将ユニオン)。
コロナ禍でもリストラせず、値上げも見事
以上、「餃子の王将」を展開する王将フードサービスについて調べてみました。特筆すべきは、サービス業として非常にしっかりとした経営が行われていること。従業員を大切にし、9年連続「月給引き上げ」、コロナ禍でもリストラをしなかった点は見事です。
また、2022年5月にコスト上昇を吸収する値上げを行い、来客数に影響が出ていない点も、巧みな経営の成果といえるでしょう。
なお、王将フードサービスの株価は、2022年7月29日に発表した第1四半期決算を好感し、8月1日には7100円の年初来高値を記録しました。現在は6400円を中心に推移しています。
(こたつ経営研究所)