多くの会社でなかなかうまくいかないバトンタッチ
しかし永守氏は今年6月に突如、CEO返り咲くという異例の人事を発令しました。理由は、「業績の伸び悩みと株価低迷」とのこと。それと、関氏の出身業界である自動車メーカー向けの業績が芳しくなかったことが、とくに「お気に召さなかった」かのような話も伝わってきました。言ってみれば、CEO禅譲からわずか一年もたずに、我慢がならぬとばかりに自らトップへの返り咲いた、というわけなのです。
しかも6月の株主総会の段階では、「逃げない限り関氏をCEOとして育てる」と後継は関氏路線で変更なしの姿勢を示していました。ところが、4~6月期の自動車関連事業が2四半期連続赤字になるや関氏を更迭し、退任を強行するという荒行に。永守氏は関氏退任を公表した会見で、業績不振、株価低迷、人材流出等をすべて関氏の責任とするかのような批判を繰り広げました。
そもそも自動車関連事業の不振は半導体不足に起因した自動車メーカーの減産状況があるわけで、このように去る者に石を対して持って追うかのような物言いには、各方面から疑問視する声もあがっています。
後継者の辞めさせ方やその回数は別として、後継問題がうまくいかないという点では、同じく創業オーナートップであるソフトバンクの孫正義氏やユニクロの柳井正氏も過去に同様の失敗をしていて、やはり未解決の大きな経営課題になっています。
さらに申し上げれば、この手の問題は企業規模の大小を問わず、オーナー社長、とくに創業社長にはありがちな話でもあります。自社を我が子のように思い、他人に経営を委ねたはずが箸の上げ下げまで口出しした挙句にクビを切る。私も過去に複数の企業で、そんな創業オーナーの振る舞いを見てきております。