米国の利上げが一服するまで...岸田政権「打つ手なし」
ところで、9月20日~21日(現地時間)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が開かれ、FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ幅を決定する。0.75%を軸とした大幅利上げが避けられない情勢だ。一方、日本銀行も9月21日~22日に金融政策決定会合を開くが、こちらは金融緩和政策を維持するとみられている。
日米の金利差がさらに拡大すれば、円安が加速し、物価上昇に歯止めをかけることがますます喫緊の課題となるが――。
岸田文雄政権の物価高対策について、「もう打つ手がないのではないか」と厳しい目を向けるのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「日銀に期待される物価高対策とは(8月消費者物価)」(9月20日付)のなかで、岸田政権が決めた輸入小麦の売り渡し価格の据え置きやガソリン補助金制度の継続、住民税非課税世帯に対する5万円給付などは、「やや消極的な対応」だし、「一時的に痛みを和らげる政策に過ぎない」と指摘する。
そして、3月以降の円安進行が消費者物価をプラス0.4%押し上げているとして、円安対策が重要だと強調した。
「円安を通じた物価高が長期化するとの懸念も、個人の間で高まってきているだろう。賃金上昇期待が限られる中、物価高が長期化するとの懸念を個人が強めると、消費が大きく抑制されるリスクが高まる。この点から、物価高が長期化するとの懸念を和らげることも、経済の安定維持の観点からは重要だ」
しかし、9月21日・22日に日本銀行は金融政策決定会合を開くが、金融緩和政策を頑として変えないだろう、と木内氏はみる。一方、FMOC(米連邦公開市場委員会)は9月21日(日本時間9月22日未明)の会議で大幅な利上げに踏み切るとなれば、ますます日米の金利差が広がり、円安は加速する。
木内氏はこう結んでいる。
「円安が物価高を促し、物価対策の効果を減じてしまうことを政府は警戒している。(中略)政府に残された円安阻止の手段は外国為替市場での介入のみだ。しかし、為替介入実施に向けたハードルは高い。また仮に実施しても、単独での円買い介入は効果が限られる。
政府としては、米国で景気減速や物価上昇率低下の傾向が確認され、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ姿勢が軟化することで円安傾向が一服するのを待つしか手がないのが現状だろう」
つまり、今のところ「お手上げ」というわけだ。
(福田和郎)