インフレ収まる代わりに「景気後退」の波が
さて、今回の消費者物価2.8%上昇、エコノミストたちはどう見ているのか。
日本経済新聞オンライン(9月20日付)「消費者物価指数8月2.8%上昇 30年11か月ぶりの上昇率」という記事に付くThink欄の「ひと口解説」コーナー欄では、第一生命経済研究所首席エコノミスト永濱利廣氏が、
「背景には、これまでインフレ率押し上げの主因となってきた電気代に食料品値上げの加速や携帯端末の大幅値上げが加わったことがあり、明らかに全国のインフレ率は加速したことになります」
と説明。
「しかし、すでに1次産品の国際商品市況はピークアウトしていますので、来年以降のインフレ率は低下に転じる可能性が高いでしょう。来年にかけて世界経済は減速が強まる可能性が高く、そもそも日本は海外と異なり需要不足です。このため、来年以降は輸入物価の押し上げ圧力の低下により日本の物価上昇率は低下に転じ、全国のインフレ率も0%台まで下がるとみられます」
と、インフレが収まる代わりに、景気後退の波をかぶる可能性を示唆した。
同欄では、学習院大学経済学部の鈴木亘教授(社会保障論)も、日本経済の需要不足の深刻さをこう強調した。
「世界的には、物価上昇率をみる基本指標は、生鮮食品とエネルギーを除くコア指数(日本ではコアコア指数と呼んでいる)である。これが、まだ1.6%の上昇率に過ぎないことこそが、驚くべきことであり、強調すべき情報である。
企業物価指数の上昇率は既に9%台で、1年近く高い上昇率が続いているにもかかわらず、消費者物価になかなかハネない。よほど需要が弱く、企業が最終財の価格に転嫁できない状況で、消費者のデフレマインドも強固であるということであろう。まだまだ、金融緩和の継続が必要なのである」