「ほら、こんなにキレイになっちゃった。私のイチ押し、ぜひ使ってみてね」......。こんなふうに、広告であることを隠し、芸能人やインフルエンサーらを使って商品を勧める「ステマ」(ステルスマーケティング)が後を絶たないため、消費者庁が規制に乗り出した。
2022年9月16日、神戸大学の中川丈久教授(消費者行政)を座長とする第1回検討会議を開き「ステルスマーケティングに関する実態調査」を発表した。
なかでも注目されるのは、情報発信の影響力が大きいインフルエンサーに「アンケート調査」を行い、「ステマ」の実態に迫ったこと。広告主から「ステマ」を依頼された人が4割もいたのだ。
主要9か国で「ステマ」規制ないのは日本だけ
ステルスマーケティングの「ステルス」(stealth)とは、英語で「隠密」「こっそり行う」の意味。ステマは消費者に広告であることを悟られないよう、商品を売りつけるマーケティング手法だ。
芸能人やインフルエンサーら著名人に商品を紹介させる方法もその1つ。「よかったよ」「おススメです」といった感想のカタチを取ってSNSに投稿する。「さくら」「やらせ」と呼ばれ、とくにInstagramでは横行しているといわれる。
電通が今年3月に発表した調査リポートによると、2021年のインタ-ネット広告費は約2兆7000億円に達し、ついにマスコミ4媒体(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)の合計(2兆4500億円)を超えた。企業もインタ-ネット広告を重視している。
だが、サイトでのクチコミ操作や、ソーシャルメディア上で影響力を持つ者に依頼し、広告であることを隠しながら好意的な記事を書いてもらうようなケースは「ステマ」にあたる。
消費者庁の公式サイトによると、河野太郎・消費者庁担当大臣は9月9日の記者会見で「ステマ対策」の必要性をこう述べた。
「『ステルスマーケティング』が消費者の自主的かつ合理的な商品選択を困難にしている。広告でないと思って飛びついたら、実はそれが広告だったというのは、消費行動にとってどうなのよ、ということだ。景品表示法の観点からこの問題に対応し、今年12月末までに結論を出したい」
検討会議が公開した「実態調査」によると、現行法では広告であることを隠すこと自体は違法ではないため、「ステマ」を規制できない。ただ、「ステマ」によって消費者に「誤認」させる誇大広告の場合は、景品表示法による措置命令の対象になる。たとえば2021年9月、「豊胸効果」がないのに、インフルエンサーがサプリを飲んで、「効果があるのは当然ですよね」と写真を投稿したケースがそれだ=下の画像参照。
「ステマ」に対する法規制がないのはOECD(経済協力開発機構)主要9か国、米国・日本・ドイツ・英国・フランス・イタリア・カナダ・韓国・オーストラリアのなかで日本だけなのだ。