米カリフォルニア州が、2035年までに州内で販売されるすべての新車の乗用車や小型トラックについて、電気自動車(EV)など走行時に二酸化炭素(CO2)を出さないゼロエミッション車(ZEV)にするよう義務づける規制を決めた。
米国の新車販売全体の12%を占める最大市場の同州の規制は他地域にも影響が大きく、エンジンありのHVを得意とする日本車メーカーは対応を迫られる。
規制値を満たさなければ...未達成分1台あたり最大2万ドルの罰金
米カリフォルニア州の大気資源局(CARB)が2022年8月25日に新たな規制案を承認した。州の別の環境部局の承認などを経て正式に導入される。
具体的には、新車販売に占めるZEVの比率を2026年までに35%、30年までに68%、35年までに100%へと、段階的に引き上げることを自動車メーカーに義務づける。規制値を満たさなかったメーカーは、未達成分について1台あたり最大2万ドル(約280万円)の罰金が科せられるという。
CARBは規制により、ガソリン車の新車販売が30年までに290万台減少し、35年までに現行車は950万台にまで減り、40年には規制対象の車からの温室効果ガスの排出量が半減するとしている。
新規制でZEVと認められるのはEVのほか、水素と酸素の化学反応によって発電した電気エネルギーでモーターを回す燃料電池車(FCV)、電池だけで約80キロメートル以上走れるプラグインハイブリッド車(PHV)。
ガソリン車、HV、電池だけで80キロメートル未満しか走れないPHVは、ZEVと認められない。また、CARBは原則として排ガスを出さない車の普及を目指している。そのため、PHVを算入する場合には、規制が要求するZEV販売台数の20%以下に抑えるよう求めている。
新規制のハードルはかなり高く...日本勢ZEVの比率まだ少なく
今回、新規制といっても、同州のニューサム知事が2年前の20年9月に、ガソリン車の新車販売を35年までに全面禁止する方針は表明済み。その指示を受け、CARBが検討していたものだった。日本メーカーは「予定されていたもの」と、ひとまず冷静に受け止めている。
とはいえ、ガソリン車の規制は世界各地で相次いでいる。
欧州連合(EU)も2035年までに、域内におけるガソリン車の新車販売を原則禁止する方針を打ち出している。中国もEVへのシフトを進む。
米国の連邦政府も22年4月、運輸省が26年に乗用車などの平均燃費を21年比3割超改善するよう、求める新基準を公表している。日本政府も、35年までに乗用車の新車販売を全て電動車とする目標を掲げる(EV、HV、PHVの内訳は未定)。
このように、「脱ガソリン車」の世界的な潮流は止めようがない。
日本メーカーも、たとえばトヨタは30年に世界でEVを350万台販売する計画を打ち出し、米国では30年に高級車「レクサス」を全てEVにする計画も公表している。
だが、それでも今回のカリフォルニア州での新規制のハードルはかなり高い。
カリフォルニア州新車ディーラー協会(CNCDA)のまとめでは、22年1~6月の同州の新車販売は約85万3000台で、うちEVとPHVの比率は計17.9%。ただ、これはEV専業の米テスラが「爆売れ」した効果が大きい。
米調査会社によると、22年1~6月のカリフォルニア州内の販売台数に占めるZEVの比率はトヨタ4%、ホンダ0.3%と少なく、日本勢としてはEVで先行する日産でも6%台にとどまる。
かつて日本車は環境性能で評価...今度はどうか?
カリフォルニア州は1960~70年代以降、排ガス規制で全米をリードし、ひいては世界の環境規制に大きな影響を与えてきた。
70年の米大気浄化法(マスキー法)では、ホンダが世界に先駆けて規制をクリアし、同社が世界的なメーカーとして飛躍するきっかけをつかんだ。トヨタもHVが同州ハリウッドのセレブの心をとらえ、普及に弾みをつけた歴史がある。
日本勢はEVで世界的に出遅れを指摘されるだけに、今回のカリフォルニア州の新規制への対応が、今後の世界戦略を大きく左右することになりそうだ。(ジャーナリスト 済田経夫)