円安が進んだら、住宅価格は上がるのか? 値上がりに対抗する「戦略的手段」とは...専門家が解説【2】(中山登志朗)

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「住宅ローン金利」の歴史的低水準&「住宅ローン減税」の実質的な拡充、という朗報

   このように、今後の住宅価格はウクライナ侵攻が長期化し、また円安基調が継続するほど、上昇する可能性が高まります。

   ただし、この状況を補って余りあるのが、「住宅ローン金利」の歴史的低水準と、「住宅ローン減税」の実質的な拡充です。

   とくに、「住宅ローンの変動金利」での借り入れは、2022年9月現在で0.310%という商品があり、他にも条件次第で0.3%台で借り入れ可能なものが多数揃っています。ですから、極めて低利&借り手有利な状況にあると言えます(「固定金利」は、「長期金利」がやや上昇基調で推移しているので、連動して若干上昇しています)。

   さらに、2022年に改定された「住宅ローン減税」制度は、控除率が一律0.7%に引き下げられたものの、新築住宅に限って控除期間が13年(中古住宅は10年)に正式延長されています。

   そして、長期優良住宅や低炭素住宅など、とくに断熱性や耐震性の高い住宅については、元本の上限が5000万円、ZEH住宅は4500万円、省エネ基準適合住宅は4000万円にそれぞれ設定されています。これら住宅性能の高い住宅以外の一般住宅は、上限が3000万円に引き下げられていますから、住宅性能の違いによって歴然とした格差が設けられたことがわかります。

   ただし、この元本の上限引き上げは2023年末まで。2024年以降は、元本の上限がそれぞれ500~1000万円も引き下げられてしまいますので、ご注意ください。

   とくに、住宅性能の高くない一般住宅は、2024年以降、元本が2000万円に引き下げられるだけでなく、控除期間も13年から10年に短縮されます。つまり、一般住宅は新築であっても、税制上は「中古住宅扱い」となってしまうのです。

   なお、中古住宅でも、長期優良住宅であれば、元本の上限は3000万円となっています。ですから、一般住宅よりも控除額は大きくなりますが、控除期間が10年と短いので「お得感」は新築住宅のほうが強くなります。

◆いま、最も賢い選択はコレ!

   断熱や耐震性能の高い住宅は、購入時のイニシャルコストは相応に高いですが、メンテナンス費用や光熱費などのランニングコストは一般住宅と比較すると大きく削減できるというメリットがあります。

   つまり、イニシャルコストとランニングコストが「トレード・オフ」の関係にあると考えれば、住宅ローン控除の優遇措置を上手に活用する。そうすると、住宅価格の値上がりに対して、低金利の住宅ローンと低ランニングコストを「武器」として、戦略的に断熱性(省エネ性)・耐震性の高い住宅を購入するというのが、いま、最も賢い選択といえるのではないでしょうか。

(中山登志朗)

中山 登志朗(なかやま・としあき)
中山 登志朗(なかやま・としあき)
LIFULL HOME’S総研 副所長・チーフアナリスト
出版社を経て、不動産調査会社で不動産マーケットの調査・分析を担当。不動産市況分析の専門家として、テレビや新聞・雑誌、ウェブサイトなどで、コメントの提供や出演、寄稿するほか、不動産市況セミナーなどで数多く講演している。
2014年9月から現職。国土交通省、経済産業省、東京都ほかの審議会委員などを歴任する。
主な著書に「住宅購入のための資産価値ハンドブック」(ダイヤモンド社)、「沿線格差~首都圏鉄道路線の知られざる通信簿」(SB新書)などがある。
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