ロシアのウクライナ侵攻を契機として、サプライチェーンが世界的に逼迫・弱体化し、エネルギーおよび資材価格、食糧価格の高騰を招いています。
この消費者物価の急激な上昇を抑制するため、西側各国は相次いで、金融引き締め政策=金利の引き上げを実施しています。
しかし、日本はこれまでのところ、独自の金融緩和政策を維持し続けることを決めており(公開されている日銀の金融政策決定会合の議事録を読めば明らかです)、欧米各国と日本の政策金利差が拡大することで、円安が進行しています。
欧米と日本の金融政策の違いから、円が「独歩安」の状況に
なぜ、欧米と日本の金利差が拡大すると、円安になるかは自明です。
円でお金を預ける(円建ての国債を購入する)よりも、ドルやユーロで貯蓄する(ドル建ておよびユーロ建て国債を購入する)ほうが高い金利が望めるからです。そのため、円を売って、ドルやユーロを購入する大きな流れができることにより、円安が進行します。
2022年9月上旬には1ドル=144円まで円安が進み、1998年8月以来24年ぶりの水準と騒がれました。そのうえ、状況はさらに深刻。今後、欧米の政策金利は8月のFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)パウエル議長の発言「ジャクソンホール・ショック」の通り、インフレを抑制するために、景気停滞を招いても金利を引き上げる、との強い意志がすでに示されています。それにより、円安がさらに進んで、1ドル=150円台、もしくはそれ以下の水準になることも想定しなければなりません。
しかも9月上旬にはECB(ヨーロッパ中央銀行)もFRB同様0.75%の利上げの方針を打ち出しました。ですから、日本の金融政策転換への圧力は日々高まっているのですが、現状では日本の円の価値だけが下がる「独歩安」の状況です(9月上旬には、オーストラリア中央銀行も0.5%の政策金利引き上げを発表しています)。
これ以上の円安を抑制するためには、日本が円を買って、ドルやユーロを売る、という直接的な為替介入が考えられますが、財務省は現段階では介入に慎重な姿勢を維持しています。