知らないうちに、他のユーザーへ動画が流れてしまった
一方、著作権者から著作権侵害を訴えられているケースで、代表的な事例を見ると――。
【事例3】アダルト動画制作業者から「著作権を侵害している」と抗議を受けた
アダルト動画制作業者の代理人から、文書が届いた。書面にはこうあった。
「ファイル共有ソフトを利用して、著作物Aを違法にダウンロード・アップロードし、制作業者の著作権を侵害している。あなたの著作権侵害行為により多額の経済的損害を被っているので、損害賠償請求する」
「和解を希望する場合は著作物Aの和解金として約20万円、A以外の著作物も含めた和解金であれば約50万円を支払うように」
「書面到着後、1週間以内に連絡がない場合は法的手段を取る」
などと記載されていた。まったく心当たりがない。どうしたらいいか。(2022年5月・50歳代男性)
ここで問題になっているファイル共有ソフトとはなにか。
インターネット上で不特定多数の人とファイルのやり取りを可能にするソフトウェアだ。利用者は、インターネットに接続された自分のコンピューターに、ファイル共有ソフトをインストールすることで、他の利用者とファイルをやり取りすることができる。
ファイルの交換は、ピアと呼ばれるクライアント(パソコンなどの端末)同士で行うP2P(ピア・トゥー・ピア)で実行される。各クライアントが自分のパソコン内の領域をネットワーク上に公開することで、ファイル共有ソフトネットワークが形成され、サーバを経由せずにファイルがやりとりされる=図表2参照。
つまり、自分のパソコン内の領域がネットワークの一部になり、他のユーザーとその領域を「共有」するわけだ。ファイル共有ソフトの中には、ダウンロード途中のファイルやダウンロードが完了したコンテンツがそのまま他のユーザーに共有されるものがある。その場合、ダウンロードだけだと思っていても、実は知らないうちにアップロードしており、他のユーザーに動画が流れてしまっているケースが多くあるのだ。
国民生活センターではこうアドバイスしている。
(1)自分が見るためだけにファイル共有ソフトを通じてファイルをダウンロードしたとしても、同時にアップロードされていることがある。著作権者に許可なく音楽や映画などのデータをやり取りすると、著作権法に違反する恐れがある。
(2)ファイル共有ソフトを通じてウイルスに感染し、自分の情報がネットワーク内に流出するリスクもある。いったんネットワーク内でファイルが複製されると、すべてのファイルを完全に消去することは事実上不可能だ。
(3)こうしたリスクを回避するための、もっとも確実な対策はファイル共有ソフトを使わないこと。そして、家族など端末の共有者にも使用ルールを徹底させることが大切だ。
(福田和郎)