「あなたは著作権を侵害しています。損害賠償を請求します」。見たい動画をダウンロードして楽しんだだけなのに、ある日突然、「法的手段を取ります」という文書が届く。まったく心当たりがない、のだが――。
こんな怖い事例が増えているため、国民生活センターは2022年9月7日、「まさか自分が著作権侵害?!~ファイル共有ソフトの安易な使用には危険がいっぱい!」という警鐘を鳴らすリポートを発表した。
どうやら「ファイル共有ソフト」が元凶らしいが......。
動画を楽しんだだけで、アップロードした覚えはないが...
全国の消費生活センターには、「ファイル共有ソフトを使い、違法に著作物をアップロードしたとして、プロバイダ事業者から照会書が送られてきた」、「著作権者から損害賠償請求するという文書が届いた」という相談が多く寄せられている。
図表1のイラストのように、相談者の多くは、動画をアップロードしている認識がないままファイル共有ソフトを使っているようだ。ファイル共有ソフトとは、端的にいえば、インターネットを利用して不特定多数の人とファイルをやり取りできるソフトウェアだが、使い方によっては違法となる恐れがあるのだ。
まずは、相談事例から見ていこう。プロバイダ事業者から発信者情報開示にかかわる意見照会書が届くケースではこんな事例が代表的だ。
【事例1】動画を視聴していただけで、アップロードした覚えがない
パソコンで見たい動画を検索したら、動画などのファイルをダウンロードできるソフトのサイトがヒットし、まずソフトをインストールして、その後に動画をダウンロードした。
その後、プロバイダ事業者から「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いた。「動画制作業者から発信者情報の開示請求を受けた。法に基づき開示することについて、意見があるか」「回答がない場合、また開示に同意しない場合でも、同法の要件を満たしている場合には、あなたの情報を開示することがある」などと書いてあった。
私がインストールしたファイル共有ソフトを通じて、動画をアップロードし、当該ソフトの使用者が動画をダウンロードできるようにしていたという内容の書類も同封されていた。私は動画を視聴していただけでアップロードした覚えがない。どうしたらいいか。(2022年5月・50歳代男性)
【事例2】家族が違法だと知らずに、ファイル共有ソフト利用していた
契約しているプロバイダ事業者から、契約者である夫宛てに書面が届いた。それによると、漫画雑誌の出版社が著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使に必要であるため、発信者の情報開示を求めているとのことで、個人情報を伝えてよいか許可を求める内容だった。
その書面に違法アップロードした日時が記されている。家族に聞くと、はっきり日時を覚えていないが、その頃漫画をダウンロードしたのでそのことだと思う、という。
家族は違法なものとは知らなかったようだ。書面によるとファイル共有ソフトを通じて漫画をダウンロードしたことで、同時に漫画をアップロードしたことになるようだ。どうしたらいいか。(2021年7月・60歳代女性)