さらなる環境負荷低減に向け、新技術開発も官民で進む
ただ、課題も多い。
まず、効率性だ。電炉は高炉に比べて、設備が小規模だから効率性に劣る。原料のスクラップの確保を含め、国内の鉄鋼生産量をすべて電炉でまかなうようなことは、とても現実的ではない。
もう一つは品質だ。純度の高い鉄を作れる高炉に比べ、電炉は不純物を多く含む鉄スクラップを原料とするため、とくに自動車向けなどの高級鋼材の製造が難しい。
さらに、電炉が、その名の通り大量の電気を消費することだ。
発電に化石燃料が大量に使われるままでは、電炉がクリーンと単純には言えない。発電の再生エネルギーの比率アップが必要だし、原発の活用の是非も議論の対象になる。
もちろん、新しい技術開発には世界中で官民挙げて取り組んでいる。
天然ガスなどで石炭を使わずに「還元鉄」という製鉄原料を作る技術はすでに実用化されており、JFEも伊藤忠商事を組んで、アラブ首長国連邦(UAE)での生産を目指している。
さらに、鉄鉱石をコークスではなく水素で化学反応させて、鉄を取り出す製法の研究開発も進んでいる。CO2を出さずに高品質な鋼材をつくれるが、こちらは技術的課題が多く、実用化はしばらく先になりそうだ。
大手鉄鋼各社はこうした技術開発、技術進歩の動向をにらみながら、一定程度は高炉を電炉に置き換え、還元鉄とスクラップを併用して品質を維持するなど、さまざまな手立てを組み合わせてCO2削減に取り組んでいくことになる。(ジャーナリスト 済田経夫)