再生エネルギー専業のレノバの株価が2022年9月上旬から連日、年初来高値を更新している。
経済産業省と国土交通省が、洋上風力発電の優先開発権が特定企業に偏らないようにする公募ルールの見直しを進めており、年内にも新たな公募が始まるとみられている。
9月に入って、とくにとっかかりとなる新たな材料が出たわけではないものの、発電所の設計や海底地盤の調査などの能力を持つレノバにチャンスが来るとの思惑から、買いが入っているようだ。
洋上風力は政府「グリーン成長戦略」主力産業の一つ
それでは公募ルール見直しのきっかけとなった、2021年12月の洋上風力発電の入札結果を振り返っておこう。
国内で大型の洋上風力発電を手がけるには、政府の公募で選ばれる必要がある。2021年末の入札は大規模開発できる事実上初の案件で、(1)秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、(2)秋田県由利本荘市沖、(3)千葉県銚子市沖の3海域が対象となった。
このうち、最大規模の70万キロワット程度の開発が見込まれる由利本荘市沖に応札していたレノバは、地域との対話も深く進めていたため有力とみられていたが、三菱商事の企業連合に敗北。
売電価格を政府の上限価格の半額程度にまで抑えた三菱商事の企業連合は、3海域のすべてで落札し、当時「総取り」と話題になった。
2050年のカーボンゼロに向けた「グリーン成長戦略」で洋上風力を主力産業の一つに位置づける政府にとって、せっかくの国内市場で国内企業が育たないことは、政策遂行上好ましくない。
また、三菱商事は投資銀行のようなもので、自社の技術を持っているというよりは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、米アマゾンといった世界的企業の力を得て、仕事をするとみられている。
それだけに、産業育成の観点から公募ルールの見直しを進めているということだ。
太陽光やバイオマス順調のレノバ、23年3月期は増収増益見込み
ではレノバとはどんな企業なのか。
現社長の木南陽介氏が2000年に創業。プラスチックリサイクルなどを手がけていたが、12年に再生可能エネルギー事業に参入し、今はそれを専業としている。15年には、現KDDIを共同創業した千本倖生氏が会長に就いている。
22年3月期連結決算(国際会計基準)は売上高にあたる売上収益が292億円、営業利益が8億円、最終利益は15億円。洋上風力の落札を逃したことの損失が利益を押し下げた。太陽光発電やバイオマス発電の運営は順調で、23年3月期は増収増益を見込んでいる。
期待先行の買いが入りやすい銘柄ではあるが、22年9月12日まで4営業日連続で年初来高値を更新する伸びには「買われすぎ」との見方もくすぶる。
洋上風力を巡るルールの見直し結果が、まずは焦点になる。(ジャーナリスト 済田経夫)