成長がはやいスタートアップ企業の共通点
最後に、中国スタートアップ企業が史上最速で成長した理由について、市場規模の大きさ、保護政策による競争の制限、プライバシーの意識の違い、ゼロから最適化できたという4つの特殊な外部環境を挙げたうえで、それらだけでは実現しなかったと解説している。
本書で紹介したスタートアップに共通するのは、「ミッションを重視、創造的な模倣による発想、プロトタイピングによる実験、外部資源の有効活用、エコシステムの創出」だと、している。
そして、第1世代はインフラ提供に専念し、第2世代や第3世代のサービスの利用者が増えれば、最終的には自分たちの収益が上がるという好循環が起きている、と説明する。
日本の社会と経済は、デジタル化が進んだ中国のはるか後ろを走っている。だからこそ、中国スタートアップに学ぶべきことは多いのではないだろうか。
「図鑑」と名乗るほど、各企業について詳しく解説しているので、参考になるだろう。学術書の水準を保ちながら、楽しくわかりやすく読ませる工夫を随所にあり、ぜひ一読を勧めたい。
(渡辺淳悦)
「世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑」
井上達彦・鄭雅方著
日経BP
2970円(税込)