冷静なのに「タカ派姿勢」強めるFRBに懸念
一方、今回の予想を上回る米消費者物価指数の伸びにFRBがタカ派姿勢をさらに強めると、景気の「大減速」を招くと警戒するのは野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。
木内氏はリポート「米国8月CPIとインフレ期待が抑制される中でのFRBの大幅利上げの帰結」(9月14日付)のなかで、家計や企業が予想する将来の物価上昇率である「期待インフレ率」(5年後)が8月時点でプラス2.9%と安定しており、今年3月にFRBが利上げを始める前の1月のプラス3.1%より低いことに注目した。
つまり、米国では今後も物価上昇が続くと予想して、買いだめや売り惜しみなどの行動をとる心理状態(インフレ期待)にはない、というわけだ。
「このようにインフレ期待が十分に抑制されている中で、FRBが急速に利上げを進め、名目の長短金利ともに上昇していけば、実質金利(名目金利-期待インフレ率)は着実に上昇し、景気抑制効果は高まっていく」
「歴史的な物価高騰のなか、物価の安定確保を使命とする中央銀行(FRB)が急速な利上げを進めることは理解できるが、期待インフレ率が十分に抑制されている現状下での急速な利上げは、遅れて景気に強い抑制効果を発揮しやすい。
その効果は、ある時点で突然、大きく顕在化する可能性がある。こうした点から、FRBの急速な利上げを受けて、来年に米国経済が後退局面に陥る可能性は高まっているのではないか」
と警告を発している。
(福田和郎)