段階的縮小が「既定路線」も、政府が待った...国費の投入規模1兆円以上膨らむ
制度の意義も薄れつつある。
原油先物市場は米国市場で6月に1バレル=120ドルを超えたが、世界的な景気減速懸念を受け現在は90ドル前後まで下落している。
石油輸出国機構(OPEC)と非加盟のロシアなどで作る「OPECプラス」は9月5日の会合で、原油需要の縮小を見越して従来の原油増産方針を一転し、10月から減産に転じることで合意した。
欧米を中心にインフレ加速で金融引き締めの流れが強まるほか、中国のゼロコロナ政策に伴う経済活動の停滞懸念も加わり、景気の先行きへの不安が高まっている。原油の需給をめぐる風景は大きく変化してきているということだ。
こうした状況を受け、霞が関では早い段階から、年末までの制度延長を認める代わりに、段階的に制度を縮小することが「既定路線」になっていた。
9月9日の対策本部直前には各メディアに「現在35円の補助金の上限額を11月に30円、12月に25円に減額する」と具体的な方針が大きく報じられたほどだ。
これに立ち塞がったのが政治だ。
与党内から「国民が物価高騰に苦しむ中、制度を縮小するなどあり得ない」(自民党幹部)と反対の声が噴出し、官邸からも「ガソリン価格が突然、跳ね上がれば国民の反発を招く」と慎重意見が浮上した。
結局、制度は縮小せずに、年末まで単純延長されることに決まった。これにより、9月末まで累計1.9兆円程度と見込まれていたガソリン補助への国費の投入規模は、年内にさらに1兆円以上、膨らむ見通しだ。