財務省は2022年9月5日、2023年度一般会計予算の概算要求額を公表した。全省庁の合計は110兆484億円となり、過去最大だった22年度(111兆6559億円)に次ぐ規模に膨らんだ。
ただ、この数字にはまやかしがある。
政府はここ数年、8月末の概算要求締め切り時点では具体的な金額を明示しなくてもいい「事項要求」を多数、認めているからだ。実際の要求額はさらに膨らむことになり、23年度当初予算は22年度当初予算(107兆5964億円)を上回り、過去最大になるのは必至とみられている。
数字を示さぬ「事項要求」膨らみ...「全体像が読めない」
概算要求は翌年度当初予算案の編成に先立ち、各省庁からの要求額にあらかじめ上限(キャップ)を設けることで、予算全体の膨張を防ぐ枠組みだ。
しかし、霞が関では「すでに機能不全に陥っている」との声が強い。重点枠や事項要求など数多くの例外が設けられた結果、予算の膨張を防ぐ機能が低下しているためだ。
政府が7月に閣議了解した「概算要求基準」を確認しておこう。 各省庁が自由に使える「裁量的経費」を22年度比で一律10%減らすよう求めたものの、削減分の3倍の額を岸田文雄政権が重視する「重要政策推進枠」に配分することを認めた。
さらに、ここに「事項要求」も加わるため、「概算要求の実際の規模がどの程度になっているか、全体像が読めない」(財務省関係者)事態に陥っている。
事項要求は本来、新型コロナウイルス対策など要求時点では全体像が読めない事業に絞って認められるべきものだ。しかし、各省庁の事項要求では緊急性があるとは思えない事業も多数、盛り込まれた。 事項要求の予算額は年末の当初予算案の閣議決定に向け、財務省と各担当省庁が協議をして詰めることになる。しかし、概算要求段階で数字が示されないため、内容を精査する時間が限られる。そのため、財務省のチェック機能が低下してしまう問題もはらんでいる。