「欧州は慢性的なスタグフレーションに陥る恐れも」
こうした事態をエコノミストたちはどう見ているのだろうか。
ヤフーニュースのヤフコメ欄では、ソニーフィナンシャルグループのシニアエコノミスト渡辺浩志氏が、
「欧州は高インフレと景気悪化が同時進行するスタグフレーションの懸念が強まっていますが、欧州中銀(ECB)は今後とも利上げを続ける公算。では逆に、ECBがいつかまたマイナス金利に戻ることはあるでしょうか?おそらくないでしょう。従来、欧州では需要不足とロシア依存の安いエネルギーによりディスインフレが続いてきました」
と説明、そのうえで、
「しかし、この先は供給制約(エネルギー不足・生産性低下)と高いエネルギー価格が構造的なインフレと景気低迷をもたらし、欧州を慢性的なスタグフレーションに陥れる恐れがあります。その場合、欧州は通貨安(ユーロ安)と輸入インフレの連鎖に見舞われ、(中略)今後リセッション(景気後退)に陥ると思われますが、それでもマイナス金利に戻ることは不可能でしょう。そうだとすると日本は圧倒的な低金利が続き、長期的に円安傾向が続くと思われます」
と、日本の円安が加速するという見方を示した。
日本経済新聞オンライン(9月8日付)「ECB、初の0.75%利上げを決定 インフレ抑制優先」という記事につくThink欄の「ひと口解説」コーナーでは、ニッセイ基礎研究所研究理事の伊藤さゆりさんが、
「ラガルド総裁の記者会見は、わずか1年半ほど前までのディスインフレとの戦いが遥か遠くに感じられるほど、中期的に2%の目標までインフレ率を押し下げる戦いは長いものになる可能性を予見させるものだった」
と、ディスインフレとの戦いから一転、インフレとの厳しい戦いになったと指摘。さらに、
「スタッフ見通しは、今回もメインシナリオの他に、ダウンサイドシナリオが示された。ロシア産ガス・オイルの遮断、商品価格上昇、資金調達環境悪化などを想定した場合、2023年の成長率は0.9%のマイナスに沈む。インフレ率は、23年は6.9%に上振れ、24年も2.7%と中期目標との乖離がメインよりも大きくなる。より大幅な利上げが必要ということになる」
と悪いシナリオになると、大幅な利上げが続くと予想した。