日銀総裁人事が年末に表面化、その時円高に転じる?
ところで、今後、円安はどこまで進むのか。
第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は、リポート「1ドル140円突破、その次の展開~円安はどこで反転するか?~」(9月5日付)のなかで、ドル円レートの推移とトレンドラインの図を示しながら「1ドル148円まで円安が進む」と予想している=図表1参照。
「3月上旬から9月初めまでの円安局面のタイムトレンドを計算して、そのラインを12月末まで伸ばしてみた(図表1)。1か月間(30日)にプラス4.2円/ドルの円安が進行する。(中略)このまま進めば、1ドル157円まで進むというのがトレンド分析の結果だ」
しかし、トレンドは必ずしも一本調子ではなかった。
図表1を見るとわかるが、5月初め~中旬と7月後半~8月初めの2回、動きが踊り場的な様相になった。これは、FOMC(米連邦公開市場委員会)の手前のタイミングである。2回ともプラス0.75%の利上げが行われたため(=図表2参照)、一時的にマイナス6円ほどトレンド線が円高方向に下方修正されたのだ。
こうしたことから、熊野氏は1ドル157円まで進むわけではなく、年末にかけて「1ドル148円まで進んでピークを打つ」と予想する。
年末でドル高基調が天井を打つ理由の1つに「次期日本銀行総裁人事」の行方があると熊野氏は指摘する。
「次の日本銀行総裁選びが本格化して、もしかすると年内に具体的な人選が明らかになる可能性がある。(中略)次の日銀総裁、副総裁候補が円安容認の政策スタンスから距離をとる発言をすることで、政治的にアピールすることも考えられる。
実は、アンケート調査などで候補者に挙げられている人からは円安に慎重な発言が聞かれている。こうした日本側の事情を概観すると、9~11月は円安が進みやすく、12月には円高方向のイベントが予想される。今後、9~12月はさまざまな思惑によって為替相場が動きやすくなるだろう」
(福田和郎)