既存事業強化+新規事業開拓「両利きの経営」進む...東洋経済「ゼネコン」、ダイヤモンド「出世・給料・人事」、エコノミスト「暴走する中国」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

非建設事業との「二兎」を追うゼネコン

   「週刊東洋経済」(2022年9月10日号)の特集は、「ゼネコン両利きの経営」。「脱請負」に活路を求め、建設事業と非建設事業との「二兎」を追う業界の近況をリポートしている。

   大手ゼネコンは、従来とは違う不動産事業を活発化させ、「建設」と「非建設」という「両利きの経営」に乗り出そうとしているという。象徴的なのはREIT(不動産投資信託)への参入だ。

   スーパーゼネコンの大成建設は2023年6月に私募REITの運用開始を目指す。当初150億円でREITを運用し、3~5年後に500億円、将来的には1000億円規模の運用になると予想される。オフィスビルや物流施設、ホテルなどを開発し、REITに売却する。

   準大手ゼネコンの西松建設も2023年夏をめどに私募REITの組成を準備している。当初は360億円規模、27年後には1000億円規模を目指す。グループ全体で、10年間で2200億円の投資を計画、そのうち半分以上の1200億円を開発・不動産事業につぎ込む計画だ。

   ゼネコンの中でREITの先駆者とされるのが、スーパーゼネコンの鹿島だ。他のゼネコンより早い2018年から私募REITの運営を開始。ゼネコンの中では不動産関連事業の展開が突出している。

   大手ゼネコンが不動産事業を手掛けるのは、いまに始まったことではない。仕入れた土地を不動産ディベロッパーに持ち込めば、建物の請負につなげられるので、「造注」と呼ばれた。だが、バブル経済が崩壊し、大手ゼネコン各社は不良資産の処理に追われ、大きな傷を負った。

   現在の動きはかつての「造注」とはまったく違う。新たな収益源として私募REITを立ち上げようとしているのだ。

   非建設分野で注目されているのが、風力発電事業や上下水道事業の保守・管理などインフラ運営の受託だ。

   準大手ゼネコンの前田建設工業を傘下に持つインフロニア・ホールディングスは、国内の建設市場が先細りすることを見越して、建築や土木など請負以外を拡充してきた。前田建設工業の子会社JMは、一早くコンビニ店舗などの保守・管理を展開している。

◆転換期を迎え、再編の動きがあるゼネコンのいま

   いま、ゼネコンは転換期を迎え、再編の動きがあるという。

   1つは、異業種からの参入だ。総合商社大手の伊藤忠商事が、西松建設に昨年12月に出資した。成熟市場とされる建設市場でグループ内のリソースを使って多角化展開し、新たな鉱脈を掘り起こすものと見られる。

   2つ目は、緩やかなアライアンスだ。鹿島と竹中工務店、清水建設が幹事となって、次世代技術の開発で連携する「建設RXコンソーシアム」が21年9月に発足したのが代表例だ。

   RXはロボティクス・トランスフォーメーションを指す。建設ロボットや自動搬送システムの開発といった次世代技術の確立に向けた連携する組織だ。従来、労働集約型だった建設業は、技術優先型の産業に変わっていく必要があるという危機感が底流にあるようだ。

   3つ目はM&Aによるグループ化だ。戸田建設が昭和建設を、高松コンストラクショングループが大昭工業を子会社化した動きがこれに当たる。

   建設業は新型コロナウイルス関連の倒産が増えているという。東京商工リサーチによると、22年6月の建設業の倒産は112件(前年同月比12%増)。地方、中小の企業が倒産に追い込まれるケースが目立っている。

変わる企業の出世・給料・人事

   「週刊ダイヤモンド」(2022年9月10日号)の特集は、「15業種 全網羅 出世・給料・人事の新ルール」。大企業のエリート部門にいれば、高待遇が約束される時代は終わったという。144職種の年収ランキングなどをまとめている。なかでも、読み応えがあるのは大手各社のトップ人事だ。

   豊田家の支配が強まっているトヨタ自動車で、豊田章男社長から長男の大輔氏への世襲に向けた動きが活発化してきた。リリーフ役の次期社長候補が副社長3人に絞られつつあるという。だが、3人とも「実績が不明瞭で経営手腕が未知数という意味で、小粒であることは否めない」と辛口な評価。

   ホンダは、「文民統治」強化で技術系人材は大ピンチだという。社長は技術系から、副社長は営業(事務)系から出すという不文律があった。だが、2代前から、その不文律が崩れたという。

   営業(事務)系が「営業・経営系」と「管理系(人事、経理財務、経営企画など)」の2つに分化。現在の三部敏宏社長、竹内弘平副社長、青山真二専務によるトロイカ体制に引き継がれている。

   二輪や汎用、四輪事業の研究開発機能を本社へ組み入れる動きが活発化し、本社の文系幹部が技術系人材を従える局面が増え、技術系人材は不遇の時代が到来している、と書いている。

◆三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友銀行では...

   3メガバンクで最も保守的とされる三菱UFJフィナンシャルグループ(FG)だが、激変人事の予兆が見え始めているという。亀澤宏規社長自身が、行内エリートが集まる経営企画部の経験がなく、頭取をしないまま一足飛びにFG社長の座に就いた。

   前例踏襲型の人事から脱却したいという意思が見え隠れし、4人のトップ候補者(いずれも取締役常務執行役員)の中には三和銀行、東京銀行出身者もいるという。

   かつては「3代先までトップ候補が想定できる」といわれた三菱UFJFGだが、時代の激変期では、その4人以外のダークホースが現れる可能性も捨てきれないという。

   三井住友銀行の歴代頭取は急住友銀行出身者が、会長は旧三井銀行出身者が担うというバランスを維持してきた三井住友銀行でも、これまでにない動きがあるという。

   常務執行役員だった萩原攻太郎氏が専務に昇格し、「次期頭取はほぼ決まりではないか」とささやかれているという。出身行と入行年次のパズルを組み合わせれば、萩原氏が本命とされるが、サプライズ人事が発動される可能性も捨てきれないという。

   このほか、東京電力ホールディングス(HD)では、本命候補を迎え撃つのは52歳の女性常務執行役で、初の女性社長かと見る向きもあるそうだ。

   「VUCA(ブーカ。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字から取った造語)」の時代にあっては、テクノロジーの変化に敏感で独自の勝ちパターンを描ける経営者が望まれる――。同誌は、「異端経営者」の登場を期待している。

中国に変調の兆し

   「週刊エコノミスト」(2022年9月13日号)の特集は、「暴走する中国」。3期目を迎える習近平国家主席の長期政権のもと、根深い不安と停滞の兆候が表れ始めているという。

   経済・社会の変調に危機感を募らせているのが、中国の富裕層だ。正規の送金手段ではない「地下銀行」を通じて、米国、カナダ、オーストラリアなどに資金を移す「キャピタルフライト(資金逃避)」が活発化しているという。

   中国の国際収支統計の「誤差・脱漏」のグラフを示している。2020年以降、大きなマイナス金額(約800億ドル)を示しており、キャピタルフライトが起きていると推察される。

   「就職難に強圧的なゼロコロナ政策への不満が若者に募り、共産党体制への失望が広がっている」と城山英巳・北海道大学教授は寄稿している。

   16~24歳の失業率は19.3%(22年7月15日発表)。公務員試験の倍率は22年、68倍に達した。就職氷河期を回避し、就職に有利な学位を得られる大学院への志願者も増え、修士課程入試の志願者は11年の151万人から22年には3倍の457万人に達した。

   運よく入社できても、「996(朝9時から夜9時まで週6日労働)」という過酷な労働環境に直面する。こうした現実に嫌気が差し、競争を避け、頑張らない「寝そべり族」という若者が増えたという。

   共産党が台湾軍事演習のリアルな映像を連日流したのは、若者らのナショナリズムを高め、不満のはけ口を「反米・日」「台湾独立派」に転嫁させると同時に、若者の軍への関心を高めたい意図がある、と分析している。

   田代秀敏氏(シグマ・キャピタル代表取締役、チーフエコノミスト)は、「日中デカップリング(分離・分断)こそ日本経済に対する最大級の脅威」と書いている。自動車、ハイテク、ファッション、食品......。多くの分野で日中両国は一大経済圏を築いているからだ。

   日中国交正常化50年。日本と中国の力関係は大きく変わった。巨大なパワーを持つようになった中国を冷静に見る視点が今こそ求められているのではないだろうか。

(渡辺淳悦)

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