22年1月以降、エンゲル係数と関連指標が大きくバラツキ始める...原因は?
ところが、22年に入って、状況が一変している。緊急事態宣言が終了した21年9月以降は収束し、同じベクトルで動いていたエンゲル係数と関連する指標が、22年に入ってからは21年9月以前と同様に、大きくバラツキ始めたのだ=表3。
このバラツキの原因となっているのは、新型コロナの影響ではなく、物価高にある。21年には前年同月比で食料費が増加したのは4か月しかなかったが、22年は半年の間に5か月も食料費が増加している。また、21年には6か月しかなかった消費支出の増加が、22年には半年で4か月になっている。
消費者物価指数の動きを見ると、価格変動の激しい生鮮食品を除いた総合指数が22年2月から上昇が続いていることがわかる。とくに、食料の物価指数は21年9月から上昇を開始し、22年に入ると1度も低下することなく、右肩上がりで上昇を続けている=表4。
22年に入ってからの動きを見ていくと、以下のようになる。
1月は可処分所得の増加に対して、消費支出、食料費も増加したが、食料費の増加幅が低かったことで、エンゲル係数は低下した。2月は所得の増加に対して、消費支出の増加は少なく、食料費の減少も少なかったため、エンゲル係数は上昇した。
3、4月は21年も同様だが、新入学・新社会人あるいは異動などの要因によって、消費支出が大きな月だ。食料費は増加したが、エンゲル係数は減少している。
5月は可処分所得、消費支出が減少しているのに、食料費は3.6%も増加し、エンゲル係数は急上昇した。これは、明らかに食料物価の上昇による食料費の増加によるものだ。可処分所得が減少する中で、消費を減らしたものの、物価上昇による食料費が増加した姿が浮き彫りになっている。
そしてボーナス月の6月。21年6月には可処分所得、消費支出、食料費とも減少している中で、食料費の減少が小幅だったため、エンゲル係数は大きく上昇した。
ところが、22年6月は所得が増加し、消費も大きく増加したなかで、食料費は小幅な増加にとどまっている。これはつまり、なるべく食料費を増やさないという、いわば「買い控え」の動きが出ているようだ。そのため、エンゲル係数はわずかながら低下した。
22年の消費支出と食料費は物価高に左右されており、エンゲル係数の上昇は「生活が厳しくなる」方向に進んでいるように見える。
エンゲル係数は、所得水準が高くなるほど低くなる。
食料費は所得水準で大きな格差はないため、相対的に所得が低いほどエンゲル係数は高くなり、所得が高いほど低くなるからだ。
つまり、エンゲル係数が上昇することは、より所得水準が低い世帯の生活が厳しくなっていることを表わす。
筆者はこれまで何度も「悪い物価上昇」を取り上げてきた。それが、エンゲル係数の上昇というかたちで明らかになり始めているのかもしれない。